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サンボー・プレイ・クック遺跡|アンコール最古の遺跡と空中宮殿

サンボー・プレイ・クック遺跡は、カンボジアで3番目に世界遺産に登録された遺跡です。アンコール最古の遺跡と言われていて、特徴的な八角形の煉瓦祠堂と「空中宮殿」と呼ばれるレリーフが見所になっています。

森の中に静かに佇む姿は神秘的で、歴史のロマンを感じさせます。シェムリアップから遠いため、訪れる人は少ないのですが、一見の価値アリの超穴場スポットです。

CN編集部

前アンコールの遺跡であり、未だに多くの謎に包まれています。森の中を探検気分で散策してみてはいかがでしょうか?

サンボー・プレイ・クック遺跡とは?

サンボー・プレイ・クック(សំបូរព្រៃគុហ៍)は、カンボジアで3番目に登録された世界遺産です。

アンコール遺跡群が1992年、プレアヴィヒア寺院が2008年、そしてサンボー・プレイ・クックは2017年に登録されました。歴史は最も古いものの、人々にその存在が広く知られるようになったのは最近のことです。

カタカナ表記の場合、「ソンボール・プレイ・クック」や「ソンボー・プレイ・クック」と書かれている場合もありますが、すべて同じ遺跡を指しています。

サンボー・プレイ・クック遺跡

1902年にフランス人陸軍少佐であったラジョンキエールによって紹介され、その後は独特の建築様式および美術様式の観点から、多くの研究者たちの注目を集めてきました。一方で、一般の観光客が訪れることができるようになったのはここ数年になります。

CN編集部

数は限定的ですが、サンボー・プレイ・クックまでのツアーを企画する旅行会社も増えてきましたね!

前アンコール朝の王都イーシャーナプラだった

サンボー・プレイ・クックは、前アンコール期(プレ・アンコール期)と呼ばれる時代の遺跡と言われています。アンコール王朝が始まる前、チェンラ(真臘しんろう)と呼ばれていた頃の王都です。

クメール人が建設した最初の都城であり、『隋書』真臘伝には「伊奢那城」として当時の反映の様子が記されています。当時の周辺国にはその存在が認識されていたようです。

サンボー・プレイ・クック遺跡群は、7世紀前半のイーシャーナヴァルマン1世が造営したと言われています。日本で聖徳太子が法隆寺を建立していた頃の時代です。

サンボー・プレイ・クック遺跡の獅子

詳しい歴史についてはコチラで紹介

クメール美術の源流

サンボー・プレイ・クック遺跡群は、その建築や美術様式の観点でアンコール時代とは異なる特徴がたくさんあります。

もともと古代カンボジアはインド美術の影響を色濃く受けてきました。一方で、独自の美意識も取り入れながら、少しずつ「クメール美術」を確立してきたと考えられています。

このサンボー・プレイ・クック遺跡群では、まさにそうした美術様式の変遷が伺えます。インド様式からカンボジア国風様式へ移行しようとした人々の挑戦だったのではないでしょうか。

サンボー・プレイ・クック遺跡
煉瓦を基本とした建築構造
CN編集部

ぜひアンコール・ワット等の他の遺跡と比較しながら鑑賞してみてくださいね。特に人物描写は独特で、古代インド美術の影響を感じさせます。

サンボー・プレイ・クック遺跡の空中宮殿の浮き彫り
アンコール遺跡群とは異なる人物描写
サンボー・プレイ・クック基本情報
  • 時代:7世紀ごろ
  • 宗教:ヒンドゥー教
  • 建設した王:イーシャーナヴァルマン1世(616-638年)
  • 建築様式:サンボー・プレイ・クック様式
    *カンボジア初の伽藍構造と言われています
  • 見学時間の目安:2時間
Klook.com

サンボー・プレイ・クックまでの行き方

サンボー・プレイ・クック遺跡群は、シェムリアップ中心からプノンペン方面に約170kmの位置にあり、車で3時間程度です。

一番近い街であるコンポントムからだと約30km離れています。スケジュールに余裕のある人や他の都市にも寄ってみたい人は、コンポントムで前泊してみるのもおすすめです。また、プノンペンの中心から日帰りで観光することもできます。

チケット販売所

アンコールパスとは別に独自のチケット(1人10USD)の購入が必要です。道の途中にあるチケット売り場で購入します。ここで観光ガイド(有料)を頼むことも可能です。

CN編集部

シェムリアップから日帰り観光するなら、ほぼ丸一日コースになります。移動時間が長くなるので、体調万全の状態で臨みましょう!

サンボー・プレイ・クック遺跡

ガイド付き観光がおすすめ!

シェムリアップから距離も遠く、人気の少ない森の中の観光になるため、できればガイド付き観光の方が安心です。自力で訪れる場合には、安全に十分注意して自己責任で行きましょう。

サンボー・プレイ・クック遺跡群自体はかなり範囲が広く(東西6km、南北4km)、エリア内に60以上の小さな建造物が点在している状態です。限られた観光時間内で効率よく巡るためにも、案内役の人がいると助かります。

現地でガイドを頼むこともできますが、英語対応となるので、日本語を希望する場合は日系の旅行会社であらかじめ手配しておきましょう。

日本から簡単に予約!

サンボー・プレイ・クック遺跡

サンボー・プレイ・クックを訪れるなら、早朝出発が基本になります。現地を午後1時ごろ出発することができれば、帰りにロリュオス遺跡群の観光を組み合わせることも可能です。

寄り道で「Spean Praptoh」へ

スケジュールによっては、シェムリアップとコンポン・トムの間にあるアンコール時代の大橋に立ち寄ることも可能です。見学は無料なので、サンボー・プレイ・クックの観光後に余裕があればぜひ立ち寄ってみてください!

こちらの「スピアン・プラップトホ」はジャヤヴァルマン7世の時代に建てられた石橋です。「スピアン・コンポン・クデイ」や「スピアン・プレア・トホ」などと呼ばれることもあります。

こちらの石橋は、かつて存在した22の橋の中でも最大規模で、長さ86メートル、幅16メートル、高さ10メートルもあります。1925年と1960年代中頃に2度修復が行われました。

かなり大きめの橋で、欄干には見事なナーガ像が残っています。これほど見事なナーガ像は珍しいです!

こちらの石橋は、現在も「橋」として日頃から使われています。車は通ることができませんが、バイクや自転車、徒歩では通行可能です。

サンボー・プレイ・クックの見所

森の中に3つのグループ

広大な敷地の中に小さな建造物が点在しており、サンボー・プレイ・クックの調査は続いています。建物が集中する寺院区域と王都の痕跡が残る区域があり、主に観光の見所となるのは寺院が集中している東側のエリアです。

寺院が集中しているエリアは、さらに北(N)・中央(C)・南(S)の3つのグループに分けられています。いずれもプラサット/祠堂は基本的に煉瓦レンガ造りです。

CN編集部

北(N)・中央(C)・南(S)のグループ間は徒歩で移動可能です。基本的に平坦な道ばかりですが、歩きやすい靴で行くのがおすすめ!

Sグループ「プラサット・イェイ・ポアン」

まずは南側にある「Sグループ」から見ていきましょう。このグループは通称「プラサット・イェイ・ポアン」と呼ばれています。エリア内には祠堂がいくつも残っており、いくつかの祠堂は新しいレンガで修復も施されています。

このグループでは、真臘国の初代王イシャーナヴァルマン1世に関する最古の碑文も発見されました。

Sグループの見取り図

正面の入り口に当たる東側から進んでいくと、まず目にするのは内周壁の塔門にあたる「S3」と呼ばれる建造物です。実はこちらのS3は、発見当初は大樹が屋根部分を突き破る形で生えていたのですが、保護のため現在は完全に除去されています。

CN編集部

説明版に当時の写真が残っていますが、改めて自然の力強さを感じますね。大樹の撤去はやや残念ではありますが、貴重な史跡を保護するためには必要な処置と言えます

S3を抜けて、さらに東方向へ進むと見えてくるのがS2と呼ばれる建造物です。こちらは主祠堂の手前にある拝殿的な建造物だったのではないかと考えられます。

S2内部には、特徴的な八角形が刻まれた台座が残っています。かつて台座の上にはシヴァ神のヴァーハナ(乗り物)であるナンディンの彫像が置かれていたそうです。

ナンディンが置かれていた台座

また、こちらの台座の上部には人の顔の装飾が残っています。明らかにクメール人とは異なる顔貌をしており、一説によると当時のインドの影響を色濃く受けていたためとされています。当時の真臘は、インドをはじめとして、西方諸侯との交流が何かしらあったのかもしれませんね。

S2を通り抜けて東側へ進むと、主祠堂であるS1が見えてきます。基壇や入り口部分は砂岩でできていますが、祠堂の大部分はレンガでできています。

祠堂内にはヨニ(台座)が残っていましたが、リンガ(シヴァ神の象徴)は所在が明らかになっていません。ヨニには細かい装飾が施されており、4層の砂岩が重ね合わせられた構造になっています。

祠堂内部はかなり広さがあり、天井は見上げるほど高いです。レンガを少しずつ内側にせり出すような形で屋根部分が形作られています。

また、S1の東側のリンテルにもぜひ注目してみてください。損傷が激しいですが、上部中央に描かれているのがインドラ神で、白象アイラーヴァタに乗っています。生命力と力強さを感じさせるデザインで、クメール芸術が次第に開花していく変遷を辿ることができます。

S1の少し手前では、八角形の構造をした建造物を目にすることができます。これはサンボー・プレイ・クックのみで見られる珍しい構造です。レンガの壁面には、「空中宮殿」と呼ばれるレリーフが彫り込まれています

主祠堂であるS1の脇を抜けてさらに東へ進むと、内周壁の西塔門にあたるS5にたどり着きます。ここではぜひ両脇に残っている周壁に施された装飾に着目してください。

S5の南側には円状に縁取られたレリーフが残っています。これらは、古代インドの叙事詩『ラーマーヤナ』の場面を描いたものと言われています。

下の写真の右側は、おそらくシータ姫がハヌマーンに自身の指輪を託す場面だと考えられます。また、左側では人物(ラーマ王子?)が獅子のような生物を戦っている場面が描かれています。

そして、最後に外周壁上にあるS16の内側をぜひチェックしてみてください。ここには6行のみの碑文が刻まれています。案内してくれたガイドさんによると「主祠堂に祀られていたリンガ」に関する内容が刻まれているそうです。

Cグループ「プラサット・タオ」

続いて中央にあるCグループを見てきましょう。Cグループは残念ながら多くの祠堂が崩壊していますが、中央祠堂である「プラサット・タオ」はしっかりと現存しており、現在も修復作業が続けられています。

「プラサット・タオ」は近くで見ると、かなり存在感のある大きな祠堂です。これほどのスケールの建造物をレンガで建てたとは思えないほどの迫力があります

「タオ」とはクメール語で「獅子」を意味する言葉であり、祠堂に計6体(北・南・東に2体ずつ)置かれていることから、「プラサット・タオ」と呼ばれています。

東側には「タオ」の姿はありませんが、非常に見事なリンテルが残っています。アンコール時代のものとは雰囲気の異なる、躍動感のあるデザインです。

Nグループ「プラサット・サンボー」

最後に、北側にある「Nグループ」を見ていきましょう。前の2つのグループと同様に、基本的に二重の周壁に囲まれており、内周壁の中央に主祠堂があります。

まず着目すべきは内周壁の南西にあるN7と呼ばれる祠堂です。こちらも特徴的な八角形の構造をしており、壁面には「空中宮殿」のレリーフが刻まれています

空中宮殿の下部では、馬などの動物や人が土台を支えるような姿で描かれていますが、実はこの中に「グリフォン」のような生き物も見られますグリフォンは上半身が鷲、下半身がライオンという想像上の生き物で、古くからギリシア・ヨーロッパの物語に登場してきました。

CN編集部

7世紀ごろのカンボジアも西洋のヘレニズム文化の影響を受けていたのかもしれませんね。謎は深まるばかりです!

そして、中央の一段高い位置には主祠堂であるN1が現存しています。こちらの主祠堂は東西南北の4方向に開かれており、屋根部分は崩壊していますが外壁面には空中宮殿のレリーフが刻まれています。

主祠堂の内部にもヨニの台座だけが残っていました。中央で祀られていたはずのリンガの所在は不明です。サンボー・プレイ・クックでは、シヴァ神に対して信仰が捧げられていました。

N9とN10では、それぞれ彫像が祀られています。N9内には、シヴァの神妃である「ドゥルガ」の立像が発見されました。その名は「近づき難い者」という意味で、阿修羅族との戦いに立ち向かう戦の女神としても知られています。

サンボー・プレイ・クックで発見されたこの立像は、頭部は失われてしまっているものの、身体の曲線美が素晴らしく、一部では「東洋のヴィーナス」と呼ばれることもあるそうです!

女神ドゥルガ像

一方で、N10で発見されたのは「ハリハラ神」の立像です。ハリハラ神とは、左半分ヴィシュヌ神、右半分がシヴァ神を表しており、カンボジアではよく見かける姿です。地元の人々によって法衣をまとった姿で安置されています。

ハリハラ神像

実は「ドゥルガ像」も「ハリハラ神像」もサンボー・プレイ・クックに置かれているものはレプリカ。本物は劣化や盗難を防ぐために、プノンペンの国立博物館で保管されています。

CN編集部

プノンペンの国立博物館には、これ以外にも貴重な出土品が展示されています。ぜひ興味のある方は訪れてみてくださいね!

Nグループ内には、外にいくつかの台座も置かれていました。用途は不明ですが、祠堂と同じく特徴的な八角形をしています。中央に窪みがあるため、何か彫像を設置するためのものだったのかもしれませんね。

八角形の台座
細やかな装飾の刻まれた台座

こちらのNグループは3つのグループの中でも特に古い時代のものと言われています。レンガは一度崩壊してしまうと修復が困難であるため、下の写真のように大きく崩壊しているものも珍しくありません。

実は、サンボー・プレイ・クックの遺跡修復には日本のチーム(早稲田大学)も関わっています。Nグループには、修復プロジェクトの様子を紹介する案内板が立てられていました。

Nグループ(北側)

実はNグループの遺跡は、外周壁の外側にもあります。道路を挟んで反対側にも見応えのある素晴らしい遺跡が残っているので、ぜひ忘れずにチェックしてくださいね!

サンボー・プレイ・クックの中でも特に人気なのが「プラサット・チュレイ」と呼ばれるN18の建造物です。祠堂全体が木の根に覆われており、完全に一体化した姿はひじょうに神秘的で、迫力もあります。

CN編集部

遺跡に絡みついている木は樹齢200年と言われています。発見当時の姿を感じることができる貴重なスポットですね!

そして、もう一つ見逃せないのがN17と呼ばれるこちらの建造物。一見するとコンクリートで作られた新しい建造物のように見えますが、砂岩でできており、Nグループの中でもかなり初期に建てられたものだと言われています

上部をよく見ると、人の顔が彫られており、両手を枠に添えるようなポーズをしています。こちらもクメール人とは異なる、西方系の顔立ちをしており、当時の真臘が美術的・文化的に西方の影響を受けていたことが窺えます。

ちなみに、こちらの建造物はヒンドゥー教の僧侶たちの修行場として使われていたそうです。本来は天然の岩窟を修行場としていたようですが、サンボー・プレイ・クックの土地には適した場が無かったため、代わりにこのような修行場が作られたのではないかと推察されています。

トロペアン・ロペアック【番外編】

最後にご紹介するのは、「トロペアン・ロペアック」と呼ばれる建造物です。Sグループから500メートルほど西に残っています。

こちらは訪れる人が少なく、自然と一体化した遺跡の姿が楽しめる穴場スポットとなっています。体力やスケジュールに余裕があれば、ぜひ足を伸ばしてみてください!

サンボー・プレイ・クックの見所まとめ

サンボー・プレイ・クック遺跡群は、シェムリアップからは距離があり、なかなか容易には訪れることのできない場所ですが、一方で観光客が少ないため、貴重な遺跡をたっぷり鑑賞できる超穴場スポットです。

アンコールの地にある遺跡群とは異なる美術・建築様式が特徴的で、考古学的にも重要な意味を持つ拠点とされています。

サンボー・プレイ・クックの見所!
  • カンボジアで3番目に登録された世界遺産
  • クメール人が初めて建設した前アンコール朝の王都跡
  • 森の中に佇む神秘的な祠堂と「空中宮殿」のレリーフ

空気の澄んだ森の中を散歩するだけでも癒される不思議な空間です。ぜひアンコール遺跡群とはまたちがった魅力を感じてみてはいかがでしょうか。

サンボー・プレイ・クック遺跡