コー・ケー遺跡群は、シェムリアップの北東約100kmのジャングルの中に、10世紀に造成された都城遺跡群です。
921年〜944年という短い期間だけ、アンコールの地より遷都されたため「幻の都」とも呼ばれています。アンコール最大規模のピラミッド型寺院プランが見どころです!
コー・ケー遺跡群ってどんな場所?
まずはコー・ケー遺跡群の基本情報を確認しておきましょう。
2023年9月にカンボジアで4番目の世界遺産に登録されたことによって、今大注目の遺跡のひとつです!
17年間だけ栄えた「幻の都」
コー・ケーの地(当時の地名、チョック・ガルギャール)が王都であった正式な期間は、928〜944年の17年間と言われています。ジャヤヴァルマン4世がコー・ケーの地に新都城を築きました。
ジャヤヴァルマン4世は、アンコール王朝第4代の王であるヤショーヴァルマン1世の妹の夫でもありました。元々は、ヤショーヴァルマン1世の二人の息子の摂政役を担っていたようです。
正式に遷都が行われたのは928年ですが、921年ごろからすでにジャヤヴァルマン4世はコー・ケーに移り住み、都城造営に着手していました。921〜928年の間は、2つの政権が併立していたことになります。イーシャーナヴァルマン2世が逝去したあと、ジャヤヴァルマン4世は王位を簒奪し、コー・ケーを正式な王都として定めました。
当時、王として認められるためには、王と神が一体であることを示す祭礼儀式を執り行う必要がありました。特別に任命されたバラモンの一族が祭礼儀式の実権を握っており、ジャヤヴァルマン4世は、アンコールの地から傍系一族を呼び寄せ、儀式担当者として登用したそうです。
ジャヤヴァルマン4世が941年頃に逝去したあとは、息子のハルシャヴァルマン2世が即位しました。しかし、即位して間もないタイミングで、友人でもあり従兄でもあったラージェンドラヴァルマン2世によって、王位を奪われてしまいます。
ラージェンドラヴァルマン2世は、アンコールの地に再び遷都し、都城や寺院の修復を行いました。このようにしてコー・ケーの地は、たった17年間で「幻の都」となったのです。
コー・ケー遺跡群は、2023年9月にカンボジアで4番目の世界遺産に登録されました!
巨大で絢爛豪華な新都城
コー・ケー遺跡群の特徴は「スケールの大きさ」と言えます。
ピラミッド型寺院「プラン」をはじめとして、巨大で大仕掛け好みの建築がとても特徴的です。ほかにも、重厚な存在感を放つ彫像が発見されています。プラン頂上にあるガルーダの台座や大リンガ像などが有名です。
残念ながら、現在は盗掘の被害や損傷が激しく、確認できる箇所が限られていますが、当時は華やかな装飾が各所に施され、コー・ケー時代ならではの美術様式が発展していたと考えられています。よく観察すると、コー・ケー美術様式の特徴である力強さや躍動感が感じられるはずです。
また、コー・ケーでは巨石が多く使われている点も特徴とされています。大きな柱石だと高さ4.7m、縦横0.8mもの大きさがあり、重さは7tにもなるそうです。ピラミッド型寺院「プラン」の頂上にも重さ7t前後の巨石が使われており、当時の建築技術の高さを証明しています。
コー・ケー遺跡群までの行き方
コー・ケー遺跡群は、直線距離でシェムリアップから北東に約100kmの位置にあります。
実際には迂回することになるので、道のりとしてはさらに長くなります。
Klook.comシェムリアップから片道2時間半
標高約70mのジャングルの中にあり、道は整備されていますが赤土が舞うため、車で訪れるのが基本的におすすめです。
シェムリアップから向かう場合、車で約2時間半かかります。
ベンメリア遺跡とセットがおすすめ
コー・ケー遺跡群に向かう途中にベンメリア遺跡があるので、セットで観光するのがおすすめです。さらに時間に余裕があれば、ロリュオス遺跡群もあわせて周ることもできます。
丸一日がかりの観光になりますが、ベンメリアとコー・ケーをセットにしている旅行会社は多いので、ぜひチェックしてみてください。プライベートで車をチャーターすると割高になりますが(日本語ガイド付きなら200USD前後)、混載ツアーなら割安です。
ベンメリア+コーケー遺跡群
遠方遺跡をセット観光
英語のツアーでも大丈夫!という人は、シェムリアップ市内の地元の旅行会社で聞いてみると良いと思います
ベンメリア遺跡の紹介はこちら
コー・ケー遺跡群の注意ポイント
コー・ケー遺跡群は、アンコールパスの対象外になっているため、別途チケットの購入(15USD)が必要です。車をチャーターしているか、ツアーの場合にはチケット販売所に立ち寄ってくれます。
以前はチケット代が「10USD」でしたが、現在は「15USD」に値上がりしました
コー・ケー遺跡群のエリアは、まだ地雷が完全に撤去されていない箇所もあるため、むやみに森の中を散策しないようにしてください。観光ルートとして設定されている道なら問題ありません。また、森の中には毒を持ったヘビやサソリなどがいる場合もあります。
エリア内の遺跡は散在しているので、信頼できる観光ガイドさんと一緒に周るのが安心です!
コー・ケー遺跡群の見どころ
コー・ケー遺跡群は、約9km四方のエリアに30以上の遺跡が散在しています。まだ調査中や修復中の遺跡も残っているため、観光で訪れることのできる場所は20箇所程度です。
その中でも特に見応えのあるポイントを今回ご紹介します!貯水地として使われていた「ラハール」をぐるっと周るように移動すると、主要な遺跡を観光することができますよ。
見落としがちな遺跡もあるので、ガイドさんと一緒だと安心ですね!
プラサット・プラム
コー・ケー遺跡エリアの南側にあるのが、プラサット・プラムです。写真の通り、樹木が遺跡に絡みついており、悠久の歴史と自然の威力を感じさせる神秘的なスポットになっています。
「プラム」とはクメール語で数字の「5」を意味します。小型の祠堂が5つ並んでいるため、現代ではこのように呼ばれるようになりました。コー・ケー遺跡群には未だ謎も多く、実際に当時どんな名前で呼ばれていたのかは分かっていません。
似たような光景は、サンボー・プレイ・クック遺跡でも目にできるのですが、シェムリアップからはだいぶ遠方になるため、ぜひここは見逃さずにチェックしてください!
プラサット・ニエン・クマウ
上記のプラサット・プラムの北側に位置するのがプラサット・ニエン・クマウです。「ニエン」は女性、「クマウ」は黒を意味します。「黒い貴婦人」と呼ばれている祠堂です。
石が黒くなった原因を火災とする説もありますが、どうやら石に含まれている鉄分が酸化したことが理由だそうです。この祠堂ははシヴァ神に捧げられました。
プラサット・チュラップ
崩壊が激しいプラサット・チュラップですが、ラテライト製の3つの祠堂は、コー・ケー遺跡群の特徴である黒色をまとっており、とても印象的です。何らかの技術的な欠点があったために、西側の壁面が崩れ落ちてしまったと考えられます。
プラサット・ドムライ
「ドムライ」とはクメール語で「象」という意味です。シヴァ神に捧げられたこの祠堂は、聖域を守護している4頭の象の彫像にちなんで名付けられました。
南の階段はシンハ(獅子)が守護しています。東の門の枠部分に刻まれた碑文も注目ポイントです。
本来4体あったはずの象の彫像はほとんど崩れてしまっていますが、北西角の象は今もきれいな状態で残っています。
こちらの彫像は5万リエル紙幣のモデルになりました。ぜひお札と本物を見比べてみてくださいね!
プラサット・バラン
コー・ケー遺跡エリアの北側にリンガを祀った3つの祠堂があります。そのうちの一つが「プラサット・バラン」があります。
リンガとは男性器をかたどったシヴァ神の象徴であり、その台座には女性器をかたどったヨニが設置されています。五穀豊穣、子孫繁栄を願う信仰の一つです。
ここまで大きなリンガはアンコール遺跡の中でもとても珍しく、巨石が使われている点もコー・ケー美術様式の特筆すべき点です。
かつてピラミッド型寺院「プラン」の頂上にも、黄金に輝く巨大なリンガが祀られていたのではないかと考えられています。
プラサット・クラチャップ
ぜひ西門の柱に注目してみてください。そこには当時の碑文が刻まれています。読むことはできませんが、歴史を感じさせるポイントですよね。また、東と西の門のデザインもとても特徴的で、破風(三角の部分)と屋根部分のデザインがバンテアイ・スレイにも似ています。
南側の破風には、水牛または雄牛に乗り、剣を携えたヤーマらしき姿が描かれているので要チェックです!
プラサット・クロホーム
プラサット・トムの東塔門として、そびえ立っているのがプラサット・クロホームです。現代では、「赤い祠堂」という意味で呼ばれています。
この祠堂は正方形設計で、東側と西側に出入り口があります。元々は独立した祠堂として建てられたようですが、後からプラサット・トムの第3周壁と合体させる形で連結されたと考えられています。
リンテル(まぐさ石)の部分には、3つの題材が彫り込まれていて、南側は動物と戦うクリシュナ、西側はナーガ、また両面に人さらいの姿が観察できます。ぜひ訪れた際は、実際に探してみてください。
プラサット・クラハムの前後には、かつての参道跡が残っています。
等間隔に石柱が並んでおり、大半は倒壊してしまいました。一つひとつの石のサイズが大きく、ここからもコー・ケー遺跡群の特徴が見て取れます。
プラサット・トム
ここからが、いよいよコー・ケー遺跡群の最大の見どころとなる部分です!
現在は崩壊している部分が多いですが、当時はプランと合わせてひとつの宇宙観を構成していたと考えられています。
中心部には玉座と思われる場所があり、王の権威を神秘性を高める役割を果たしていました。プラサット・トムを囲うように、大海を象徴する環濠が配置されています。
全体の配置は、貯水地ラハルと直行する方向で位置付けられているため、ほかのアンコール遺跡と異なり、南北東西の軸が反時計回りに約15度傾く形になっています。このように当時の建築では、方角が重要な要素となっていました。
この辺りは位置関係が少しややこしいので、ぜひ地図でも確認してみてください。プラサット・クラハムとプラサット・トムを通り抜け、西側に進んでいくとプランにたどり着くことができます。
プラン(ピラミッド型寺院)
プラサット・トムを通り抜け先にピラミッド型寺院であるプランが鎮座しています。高さ36mのプランは、近くで見ると存在感たっぷりです!
プランは7層建てになっていて、第一基壇部は1辺62メートルの正方形になっています。
東側の正面には、かつて使われていた急峻な石階段が設置されていますが、現在は北側にある木製の階段で登ることが可能です。(*2024年3月時点で、新しい階段を設置中でした)
階段と手すりが設置されているので比較的安全に登ることができますが、頂上に辿り着くのはなかなか大変です…!
何といっても圧巻なのが、頂上から眺める景色!ピラミッド型寺院のため、360度のパノラマを見渡すことができます。
晴れた空とジャングルの緑のコントラストが美しいですね。
頂上部分には、かつて巨大なリンガが設置されていたのではないかと推測されています。現在は、巨大な土台石だけが設置されています。
基壇を支えるガルーダ像も必見の鑑賞ポイントです。
プノウ・ドムライ・ソー
プランの西側には、人口の小高い丘があります。
地元の人たちに「白象の墓」と呼ばれている場所です。ジャヤヴァルマン4世が可愛がっていた白象が亡くなった際に建てられた墓と言われています。
この白象の伝承は、コー・ケーだけでなくベンメリアや大プリア・カンなどの地方でも語られており、当時の村人たちの往来と交流を裏付ける証拠にもなっています。
白象の伝承をくわしく知りたい方は、ぜひ下記をご覧ください!(クリックすると開きます)
ある日、村娘が森の中で農作業をしていた。村娘は喉の渇きを感じたが、持っていた水を使い切っており、側にいた人も水を分けてくれなかった。そこで村娘は水を探しに行き、偶然にも溜まっていた水を見つけることができた。村娘はその水を飲み、さらには水浴びをした。
驚いたことに、村娘が家に帰るとお腹が大きくなっていて、その身に子どもを宿していることに気づいた。実は村娘が見つけた水は、象の小便だったのである。しばらくして女の子が生まれ、トンセトラと名付けられた。
トンセトラは成長するにつれて、自身に父親がいないことを気にするようになり、ついに18歳のときに母から真実を聞かされる。トンセトラに母は「おまえの父親は白象である」と告げたのであった。
真実を知ったトンセトラは父である白象を探す旅に出た。ジャングルを彷徨い、数々の動物に父の行方を尋ね、ようやくトンセトラは父に出会うことができた。白象はトンセトラを信用せず、なかなか自分の娘だと認めなかったが、トンセトラが課題を達成したことでようやく娘として受け入れることにした。白象は、娘であるトンセトラをたいそう可愛がり、森の仲間に自慢していたという。
ところが、ある日トンセトラは父の不在中に、獲物を狙う猟師に拐われてしまう。猟師の目的は、白象の象牙であった。白象は娘のために奔走したが、猟師はトンセトラを連れて逃げ回っていた。ベンメリア寺院やプラサット・コン・プルックなどを経て、白象はようやくコー・ケーで二人に追いついた。しかし、猟師に水を与えられなかったトンセトラは死んでしまっており、白象も猟師によって殺されてしまった。
白象の亡骸は、コー・ケーのプラサット・トムの裏手に埋められ、その小山は白象の墓(プノン・ドムライ・ソー)となったのである。
*「白象が嘆きのあまりベンメリア遺跡で大暴れし、傷心のままコー・ケーで息を引き取った」とする説もあるようです
コー・ケー遺跡群のポイントまとめ
コー・ケー遺跡群は、大小様々な遺跡が散在しており、ひじょうに見応えのある観光スポットです!
シェムリアップ(アンコール地方)の遺跡とは、また一味ちがった美術様式や雰囲気が楽しめるので、ぜひ足を運んでみてください。
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ピラミッド型寺院「プラン」は近くで見ると迫力たっぷり!頂上からの景色も素晴らしく、一見の価値ありです。2023年9月にカンボジアで4番目の世界遺産に登録されました!