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ロレイ遺跡 [Lolei] インドラタターカの中央に浮かんだ須弥山を模した寺院

ロレイ遺跡は、893年にヤショーヴァルマン1世によって建設されたヒンドゥー教寺院です。

かつてはインドラタターカと呼ばれる貯水池の中央に浮かぶ小島で、舟で向かう必要がありました。広大な貯水池を大海に見立て、中央の寺院を神々の住まう須弥山として祀っていました。

バコン寺院プリア・コー寺院と同様に「ロリュオス遺跡群」の1つであり、アンコールの地に遷都される前に建てられた古い時代の寺院です。

CN編集部

観光するなら「ロリュオス遺跡群」をセットで巡るのがオススメ!それぞれの寺院を比較しながら鑑賞してみてください

ロレイってどんな遺跡?

ロレイ寺院は、もともと「インドラタターカ」と呼ばれる貯水池(バライ)の中央付近にある人工島に建っていました。父王・インドラヴァルマン1世の後を継いだヤショーヴァルマン1世が893年に創建したと言われています。

インドラタターカとは「インドラヴァルマン王の貯水池」という意味。877年にインドラヴァルマン1世の治下で造営が開始。バライの完成により、水路を用いた田越灌漑が可能になった

現在は貯水池(バライ)が干上がっていますが、ロレイの周辺には当時使われていた船着場が残っています。

こうした建築様式はヒンドゥー教の宇宙観を象徴しており、水域に浮かぶ中央寺院は神々の住まう須弥山しゅみせん(メール山)を模したものであると言われています。

このロレイの様式は、後の東メボンや西メボンの原型となりました。須弥山(メール山)を意識した建築は、他の多くの寺院にも影響を与えています。

須弥山しゅみせん(メール山)とは、古代インドの世界観に登場し、世界の中心にあると考えられた聖山のこと。仏教やヒンドゥー教だけでなく、ジャイナ教やバラモン教でも共通する概念

ヤショーヴァルマン1世の祖霊を祀った寺院

ロレイ寺院は、シヴァ神とヤショーヴァルマン1世の父母・祖父母に捧げられました。父王はインドラヴァルマン1世であり、母は名家出身のインドラデヴィ王妃です。ロレイで祀られている祖父母は、母方の血筋であると言われています。

ロレイ寺院には、石積みのテラスの上に4基の煉瓦れんが祠堂が建てられていて、それぞれ父母と祖父母に一人ずつ捧げられました。前側(東側)の2基は男性に対するもので、後側(西側)の2基は女性に対するものです。

CN編集部

祠堂の数は異なるものの、プリア・コー寺院とよく似た形式ですね!

一説によると、プリア・コー寺院と同様に当初は6つの祠堂の建設が予定されていた可能性があります。

しかしながら、発見された碑文には、「4つの神(祖霊)に捧げられた」と記載されているので、6基の建築案は選択されなかったようです。

ロレイ基本情報
  • 時代:9世紀後半(893年)
  • 宗教:ヒンドゥー教(シヴァ神)
    *神と一体化した王の祖霊を祀っています
  • 建設した王:ヤショーヴァルマン1世
  • 寺院形態:平地型
  • 建築様式:プリア・コー様式
  • 見学時間の目安:20分

ロレイ遺跡への行き方

シェムリアップの中心部からは車で20〜30分ほどの位置にあります

ロレイ寺院は、ロリュオス遺跡群の一つであり、もっとも近いプリア・コー遺跡からは車もしくはトゥクトゥクで5分ほどです。

ロレイ遺跡自体は約90m四方の小さな敷地ですが、その中には近代に建てられた仏教寺院と僧房も建てられています。

現代寺院である「ワット・ロレイ」

約600人の僧侶が修行をしており、「ワット・ロレイ」は厄払いのお寺としても有名です。

ロリュオス遺跡群をセットで巡る

ロレイ寺院を単体で訪れることは珍しいので、「ロリュオス遺跡群」をセットで巡るのが一般的です。シェムリアップ中心部からはそれほど離れていないので、車やトゥクトゥクでぜひ足を伸ばしてみてくださいね!

CN編集部

もしくは、ベンメリアコー・ケーなどの遠方の遺跡に向かう途中で立ち寄ることもできますよ!

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主なロリュオス遺跡群
  • バコン寺院 [Bakong]
  • プリア・コー寺院 [Preah Ko]
  • ロレイ寺院 [Lolei]

*ほかにも近辺に小規模の遺跡が散在しています

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ロレイ遺跡の見どころは?

ロレイは、比較的小さな遺跡ですが、見どころはたくさんあります。祠堂自体はレンガ造りですが、装飾部分には砂岩が用いられています。

  • 中央小島の役割を果たした十字水路跡
  • 豪華緻密なリンテルの浮き彫り
  • 繊細で美しい偽扉の装飾
  • 美しいドヴァラパーラ&デヴァター像

中央小島の役割を果たした十字水路跡

バライ(貯水池)の中央に建てられた寺院では、水に関するさまざまな儀式が行われていたと考えられています。農業経済を基盤とする当時のアンコール王朝では、「治水」が重要なキーワードとなっていました。

ロレイの4基の祠堂の中央には、リンガ(下の写真中央)が設置されています。また、リンガを中心として、十字に交差する砂岩のといが備えられているのも特徴的です。リンガの上を流れると水が清められるとされており、砂岩の樋を通ってバライに聖水を流す役割を担っていたのではないかと考えられます。

CN編集部

リンガは「生命の源」「繁栄の象徴」として崇拝されるだけでなく、雨乞いの儀式にも用いられていたと言われています

豪華緻密なリンテルの浮き彫り

ロレイ遺跡の祠堂は基本的にレンガ造りですが、リンテル(入り口上部の長方形の部分)などの浮き彫りには砂岩が用いられています。

プリア・コー寺院と同様に、精妙巧緻な装飾が施されていて、とても美しいです!

北西側の祠堂の東側上部にあるリンテル

上の写真のリンテルは、北西側の祠堂にあります。中央にガルーダらしき顔があり、その下には小さな三頭のナーガが描かれています。

左右に伸びた茎のようなものの周囲には、踊り手や騎手など多様な人物が登場するのも興味深いです!上段には、リシ(賢者)や踊り手が並んでいます。

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なかなか珍しい意匠のリンテルです。これは一見の価値アリ!

また、南東側の崩壊した祠堂の近くには、リンテル部分だけが地面に置かれていました。崩れてしまった祠堂の一部だったのではないかと思われます。

繊細で美しい偽扉の装飾

カンボジアの遺跡には「偽扉」と呼ばれる装飾がよく登場します。祠堂の入り口が一つのみの場合、その他の3面に同様の彫刻が施されることが多いです。

ロレイ遺跡の各祠堂も、本来の入り口は東側のみに設置されているので、その他の3面は「偽扉」になっています。

この偽扉に施された彫刻が実に見事で、当時の職人たちの高い技術力と篤い信仰心が感じられる部分です。ぜひ近くでじっくり観察してみてくださいね!

美しいドヴァラパーラ&デヴァター像

ロレイ遺跡自体は経年とともに崩れてしまっている部分が多いのですが、砂岩で造られた浮き彫り部分は今も美しく残っています。

北西側の祠堂に施されたデヴァター像は特に保存状態が良く、1000年以上も前の作品とは思えないほどです!サンポットと呼ばれる腰布のひだまではっきりと残っています。

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ぜひ注目していただきたいのが、「足の部分」です!

他の遺跡では、足首が直角に曲がった状態で描かれているのですが、ロレイでは自然に足が正面を向いた状態で描かれています。

左がドヴァラパーラ(門衛神)右がデヴァター(女神)

ロレイ遺跡のポイントまとめ

ロリュオス遺跡群の一つである「ロレイ遺跡」についてご紹介しました!

規模としては小さめでコンパクトにまとまった遺跡ですが、当時の王朝の様子を感じられるポイントがたくさん詰まっています。とくに祠堂のリンテルやデヴァター像などは保存状態も素晴らしいので、ぜひロリュオス遺跡セットで訪れてみてくださいね!

CN編集部

似た様式の「プリア・コー寺院」と比較しながら鑑賞するのも面白いと思います!

ロレイ遺跡のポイント
  • 寺院中央の十字水路とリンガ
  • 精妙巧緻なリンテルの浮き彫り
  • 美しいドヴァラパーラ&デヴァター像
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