ニャック・ポアン遺跡は、12世紀末にジャヤヴァルマン7世によって建立されました。「ジャヤタターカ」と呼ばれる北バライ(貯水地)の中心にあります。
規模としては他の遺跡と比べるとかなり小さめですが、他の遺跡とは役割や構造がだいぶ異なり、アンコール遺跡群の中でも独特な存在感を放っています。
Klook.comニャック・ポアンってどんな遺跡?
ニャック・ポアン遺跡はジャヤヴァルマン7世によって12世紀末に建立されました。プリア・カン遺跡とほぼ同じ時期に建てられたと言われています。
ニャック・ポアンの名前は「絡み合う蛇」を意味しています。中央祠堂の基壇部分に2匹の大蛇(ナーガ)が絡み合っていることが由来となりました。
実はこのニャック・ポアンはかつて施療院として使われていたそうです。ニャック・ポアンは、ヒマラヤにある神秘の湖アナヴァタプタを模したもので、この聖水はあらゆる病を癒すと考えられていました。
アナヴァタプタは世界の中心にあり、その流れは4つの聖なる川(ガンジス川、インダス川、アム・ダリヤ川、タリム川)につながっていきます。
アンコール王朝の長い歴史の中で、偉大な王として語り継がれている人物です。大乗仏教を篤信し、数々の寺院の建設に着手しました。バンテアイ・クデイやプリア・カン、タ・プロームなどが彼の功績です。
当時チャンパという国によって支配されていたアンコール地域を奪還し、戦争で荒廃していたアンコール都城の復興に尽力しました。1181年に王として即位したと言われています。
また、戦だけでなく慈善事業にも手厚く取り組んでいた点が評価されています。国内に102の病院を建設し、主要な道路に宿駅を設置しました。「ジャヤ」は「勝利」を意味し、「ヴァルマン」は「守護する者」を意味しています。
ニャック・ポアンは、北バライの中心にあります。バライとは人工的に造られた貯水地のことで、このバライは「ジャヤタターカ」と呼ばれています。
アンコール王朝において、バライは単に農業のために水を管理する役割だけでなく、宗教的にも大変強い意味を持っていました。
人工的に造られたとは思えないほどの広さですよね!当時の土木・治水技術の高さがうかがえます。
天気が良い日には、水面に空が反射してとても幻想的な景色になりました!遺跡だけでなく桟橋からの風景も見所ですよ。桟橋は約400mほど続きます。ぜひゆったりとお散歩も楽しんでくださいね。
ニャック・ポアンの行き方
ニャックポアンは「大回りコース」と呼ばれるルートに含まれる遺跡です。シェムリアップの中心地からはトゥクトゥクで約30分かかります。
大回りコースはこちらでも紹介!
Klook.comバライ(貯水地)の中央の小島にあるため、駐車場からは桟橋を渡って向かう必要があります。トゥクトゥクを降りたら、看板の示している方向に従って進みましょう。
バライの水量は季節(雨季・乾季)によって変化します。水量が多いときには、まるで水に浮かんだ橋を渡っているような景色になり、とても幻想的です。
前回行った際は蓮がたくさんありました!蓮の花は午前中にたくさん咲きます
ニャック・ポアンの見所
ニャック・ポアン遺跡自体はとてもコンパクトな遺跡です。見どころは中央池とその周りを囲んでいる4つの小池です。
ただし、現在は遺跡保護と安全確保のため、一部のエリアへの立ち入りが禁止されています。細部まで見たい場合、もしくは撮影したい場合には双眼鏡や望遠レンズがあると便利ですよ。
4つの小祠堂
中央池の周りには、4つの小池が設置されています。これは神秘の湖アナヴァタプタから流れる4つの聖なる川(ガンジス川、インダス川、アム・ダリヤ川、タリム川)を模したものだと言われています。
また、世界を構成する四大元素である水、土、火、風を象徴しており、この4つの小池は石の樋によって中央池とつながっています。
樋はそれぞれ祠のようになっていて、その入り口には象(北)、人間(東)、獅子(南)、馬(西)の頭の姿をした石像が設置されています。それぞれの口の部分から水が流れ込む仕組みです。
インドには四大獣と呼ばれる動物がいて、象・雌牛・獅子・馬がそれぞれ北・東・南・西を守護していると考えられています。
ところが、ニャック・ポアンでは雌牛の代わりに人間の頭が設置されました。この例外はニャック・ポアンの謎の一つになっています。
水が干上がる乾季には人が入れるようになるのですが、残念ながら現在は中央エリアへの立ち入りが禁止されているので、石の樋の姿を見ることはできません。
中央祠堂
中央祠堂の基盤部分を2匹のナーガが取り囲んでおり、尾の部分で2匹が絡み合っています。
この姿から、「絡み合う蛇(=ニャック・ポアン)」と呼ばれるようになりました。
中央祠堂は巨大な蓮の花の形をした土台の上に建っています。ジャヤヴァルマン7世の指示に従って、少しずつ増築していったようです。
偽扉の部分にはロケシュヴァラ(観世音菩薩)の姿が描かれ、角には3つの頭を持つ象の姿が装飾として加えられています。
神馬ヴァラーハ像
ニャック・ポアン遺跡の見所の一つが、この神馬ヴァラーハ(Valaha)の像です。
雨季には下半分が水に浸かってしまいますが、乾季になると全体像を目にすることができます。
かつて善良で信心深い商人シンハラとその仲間は嵐に遭い、人喰い女たちの住む島に打ち上げられてしまった。しかし、彼らは美しい姿をした女たちの本性に気づかず、次々に女たちの夫にされてしまう。
ある日、部屋の隅のランプがシンハラに囁いた。「女たちは恐ろしい人喰いで、お前たちに危機が迫っている。海辺にいる白馬に乗って逃げよ。ただし、馬に乗ったら決して目を開けてはいけない」というお告げによる、シンハラたちは何とか島を脱出することができたのだった。
この馬が観世音菩薩の化身である「神馬ヴァラーハ」だったと言われている。
ニャック・ポアン鑑賞のポイントまとめ
ニャック・ポアン遺跡はコンパクトでありながら、他の遺跡とは異なる独特の世界観を表現しています。森の中の水面に中央祠堂が反射する姿はとても神秘的です。
大回りコースに組み込まれていることが多いので、ぜひ機会があれば立ち寄ってみてください。
桟橋から眺めるジャヤタターカ(貯水地)の景色もオススメです!
周囲の自然も含めて、美しい景観の楽しめるユニークな遺跡です。面白い伝説も残っているので、ぜひこの記事を最後まで読んでみてくださいね!