
プノン・バケンは、シェムリアップ市内の中でも夕日の観光名所として有名なスポットです。三聖山の一つに数えられており、頂上からはアンコール・ワットを見渡すこともできます。
ジャングルの中に夕日が沈んでいく様子はまさに絶景! 鑑賞しやすいポジションはすぐに埋まってしまうため、ハイシーズンは少し早めの時間に向かうのがおすすめです。後ほど詳しくご紹介します。
プノン・バケンってどんな遺跡?
まずは大まかなプノン・バケンの歴史を見てみましょう! 実はアンコール・ワットよりもだいぶ歴史が古い寺院で、アンコールの地に遷都したばかりの頃に建立されました。
「プノン」はクメール語で「山」という意味であり、宗教的に神聖かつ重要な存在として考えられていました。
Klook.comプノン・バケンの歴史
プノン・バケン寺院は、9世紀末にヤショーヴァルマン1世によって造られました。タイ国境近くにある「プレア・ヴィヒア寺院」と同じ時期だと考えられています。
ヤショーヴァルマン1世は、現在のアンコールの地に首都ヤショーダラプラを建設した王としても知られています。その少し前の時代は、現在のロリュオスにあったハリハラーラヤが首都だったのですが、後継者争いによる混乱のため、遷都することになりました。

ヤショーヴァルマン1世以降、基本的には現在のアンコールの地を中心にクメール帝国は発展していくことになります。

三聖山の一つ「プノン・バケン」
プノン・バケンはカンボジアにおいて三聖山の一つに位置づけられています。かつてのアンコール王朝において、「山」は政治的にも宗教的にも重要な意味を持っていました。
当時の宗教的世界観において、寺院・バライ(貯水池)・山の3つを揃えることはとても重要でした。山は須弥山(メール山)、バライは大海を象徴していたと考えられます。

プノン・バケンまでの行き方
地図で見るとわかるように、プノン・バケンはアンコール・ワットからアンコール・トムに向かう途中にあります。市内中心部からは車やトゥクトゥクで10〜15分ほどです。
ツアーだと夕日鑑賞のために、午後の遺跡観光の最後に訪れるパターンが多くなっています。

朝や昼間も見晴らしが良いので、観光としてはどの時間帯もオススメです!
山頂まで徒歩15分ほど
プノン・バケン寺院は山頂にあるため、麓からは徒歩で向かう必要があります。車やトゥクトゥクが入れるのは麓の入り口までです。
かつての正面からの参道は閉鎖されているため、山をぐるりと周りながら頂上に向かうコースを進みます。わかりやすい1本道なので迷うことはありません!

それほど斜面は急ではありませんが、標高60mの山頂までは徒歩で20分ほどかかります。ぜひ歩きやすい靴で向かってください。
頂上に向かう途中で「バクセイ・チャムクロン」の姿を目にすることができます。スラリとした姿が美しい単祠堂型の遺跡です。木々の合間から覗く姿が素敵なので、ぜひ少し足を止めて鑑賞してみてください!

夕日鑑賞の際は早めに行くのがオススメ!
人気の夕日鑑賞スポットであるため、ハイシーズン(11月〜1月頃)は混み合うことが多いです。特に夕日を見やすい西側のスポットは埋まってしまうことがあるので、ベストスポットで撮影を狙うなら、ちょっと早めに向かいましょう。
以前は、プノン・バケンの主祠堂の手前で整理券が配布されていました。寺院に登れるのは一度に300人までという制限が設けられていたのですが、2024年時点では制限はありません。


夕日鑑賞のベストスポットは混雑しがちなので、早めの時間に行ってスタンバイしておくのがオススメです。ただし日が出ているうちは暑いので、日除けや水分などをお忘れなく!
日没のタイミングは季節によって異なります。早い時期は17時半ごろ、遅い時期だと18時半ごろです。大まかな日没時刻は下記のようになっているので、目安にしてみてください。


プノン・バケンの見どころ!
頂上からの絶景と夕日
プノン・バケン寺院の見どころは何と言っても、頂上からの美しい眺め!
遺跡の頂上は、アンコール・ワットよりも高い位置にあるため、5つの尖塔をすべて見ることができます。上から眺めるアンコール・ワットの姿も格別です。



プノン・バケンはピラミッド型の寺院であるため、最上部からは360度景色を見渡すことができてしまいます!ジャングルに夕日がゆっくりと沈んでいく雄大な景色をぜひご自身の目で確かめてみてください。

日が沈んだ後は、かなり周囲が暗くなります。遺跡を降りる際には足元に十分注意してください。不安な場合には、足元を照らすライトがあると安心です。
仏足石(ぶっそくせき)
プノン・バケン寺院の東側には仏足石(仏足跡)も残っています。
仏足石とは、初期仏教において仏がそこに存在したことを示すしるしとして用いられた石の彫刻で、アジアの各地で発見されています。
かつてのアンコール王朝はヒンドゥー教が信仰されていた歴史が長いですが、同時に仏教が信仰されていた時代もありました。基本的に両者は対立するものではなく、古来から続く精霊信仰とうまく融合しながら信仰されていたと考えられています。


頂上祠堂と美しいデヴァター像
プノン・バケンは6層のピラミッド型寺院で、109の祠堂と小塔が建てられていました。地層には44基、各層には12基ずつ、そして最上層には5基の祠堂があったそうです。
- 地層に44基の小塔
- 第1層から第5層までに各12基の小塔
- 第6層に5つの祠堂(主祠堂+小祠堂4基)
つまり、主祠堂の周りを108基の小祠堂や小塔が囲んでいる形になります。
108というのは、ヒンドゥー教において象徴的な数字です。たとえば、アンコール・トムの南大門の乳海攪拌では、大蛇を引っ張っている神々とアシュラの数を合わせると合計108体になります。

また、興味深い事実として、主祠堂と4基の祠堂の位置に着目してみましょう。
実は、これら5基の祠堂は中心よりもやや西側に寄って建てられています。東側にスペースを生み出すために、このような設計が意図的に行われました。
これらの祠堂には美しいデヴァターの彫刻が施されています。残念ながら破損してしまっているものが多いのですが、中央祠堂の北東側壁面には比較的状態の良好なデヴァター像が残っています。

プノン・バケンのデヴァター像の中には銃撃により破損しているものもあり、1970年代にクメール・ルージュの兵士が射撃練習を行った際の被害だと言われています。プノン・バケンは、その地理的特徴からクメール・ルージュ軍の砲台として使われていた時期もありました。
年代的に古いこともあり、経年劣化で欠けてしまっている部分もありますが、凛々しい表情のデヴァター像は大変美しく、魅力的な姿をしています。


痕跡が残る昔の石像
プノン・バケン寺院は建てられた年代がアンコール地域の中でも古いため、破損している箇所がいくつかみられます。
下の写真はナンディン(聖牛)です。プノン・バケンはシヴァ神に捧げられた寺院で、ナンディンはシヴァ神の乗り物として知られています。

また、頂上にはリンガ(シヴァ神の象徴)とヨニが残っていました。

プノン・バケン遺跡のポイントまとめ
プノン・バケンは夕日鑑賞のスポットとしての人気もありますが、日中の観光も実はおすすめです。
夕方は暗くなってしまってなかなか細部まで観察できませんが、明るい時間帯はレリーフなどもじっくり楽しむことができます。
また、晴れた日には遠くまで見渡すことができるので、夕日とはまたちがった絶景が味わえます。夕方の時間帯は混雑することがありますが、日中は比較的空いているので、そういった意味でも穴場です。

山頂までの道がちょっと大変ですが、良い運動にもなるので、ぜひせっかくなら登ってみてください。水分補給はお忘れなく!

アンコール・ワットは朝日鑑賞で有名ですが、夕日鑑賞ならプノン・バケンがおすすめ!雄大な自然に囲まれながら、ゆっくりとした時間を過ごしてみませんか?