
カンボジアのアンコール遺跡群といえばアンコール・ワットやバイヨン寺院が有名ですが、静寂と神秘に包まれた“穴場スポット”を探している方にぜひ訪れてほしいのが「チャウ・スレイ・ヴィボル寺院」です。
観光客の少ないこの遺跡は、密林に抱かれたまま静かに時を刻み、かつてのクメール王朝の祈りと営みを今も感じさせてくれます。
こちらの記事では、チャウ・スレイ・ヴィボルの魅力と見どころ、アクセス方法まで詳しくご紹介!
チャウ・スレイ・ヴィボルってどんな遺跡?
アンコール遺跡群の中でも知名度は低いものの、歴史と神秘が息づく「チャウ・スレイ・ヴィボル寺院」は、まさに“密林に埋もれた秘境”そのものです。
創建は11世紀とされ、クメール王朝のスールヤヴァルマン1世によって建てられた可能性が高いと言われています。さらに12世紀には改築や増築も行われたと考えられており、複数の時代が交錯する歴史のロマンを感じさせてくれます。

シェムリアップ中心部から車でおよそ1時間弱、小高い丘の上に位置し、周囲を鬱蒼とした森が取り囲むこの寺院には観光客の姿もまばら。崩れ落ちた祠堂がそのまま残る姿は、朽ちた美しさと静けさを湛え、訪れる者に深い感動を与えます。

隠れた名所として、じっくりと味わいたい超穴場の遺跡です!

遺跡へのアクセス・観光方法
チャウ・スレイ・ヴィボルはややマイナーな遺跡のため、情報があまり多くありません。まずは遺跡の位置やアクセスをご紹介していきます。
チャウ・スレイ・ヴィボルの位置
チャウ・スレイ・ヴィボル寺院は、カンボジアのシェムリアップ中心部から東へ約17km、車でおよそ45分から1時間の距離に位置しています。
アンコール遺跡群の主要エリアからはやや離れており、観光ルートから外れた静かな場所に佇んでいます。寺院は小高い丘の上に建てられており、周囲を密林が取り囲むことで、より一層秘境感が漂います。
アクセスは車のチャーターが一般的で、道中にはローカルな農村風景が広がり、カンボジアの素顔に触れることもできる魅力的な行程となっています!

トゥクトゥクで行けなくもないですが、距離があるため車の方が快適に移動できると思います(少し途中で揺れるかもしれません)

ロリュオス遺跡群とセット観光がおすすめ
チャウ・スレイ・ヴィボルを訪れる際におすすめなのが、近隣にある「ロリュオス遺跡群」とのセット観光です。ロリュオス遺跡群はアンコール王朝初期の重要な建築群で、プリア・コー、バコン、ロレイの3つの主要寺院から成ります。
シェムリアップ中心部から東側に向かうルート上にあり、チャウ・スレイ・ヴィボルとも比較的近いため、1日で効率よく回ることが可能です。

ロリュオスで王朝の始まりを感じた後、さらに人の少ないチャウ・スレイ・ヴィボルで静寂と自然に包まれる……そんな変化に富んだ遺跡巡りを体験できますよ!

また、遺跡以外だと手織りクロマーの工房が近いので、せっかくなら足を伸ばしてみるのもおすすめ!すぐ隣には陶器の工房兼ショップもあります。
Klook.comチャウ・スレイ・ヴィボルの見どころ
丘の上に立つ中央祠堂エリアはコンパクトな造りをしていますが、実は環濠の大きさはアンコール・ワットに次いでアンコール遺跡郡の中で2番目(南北に約1km、東西に約1.5km)!

そんなチャウ・スレイ・ヴィボル寺院の見どころをご紹介していきます!
西塔門
チャウ・スレイ・ヴィボルを訪れる際は、西側からのアクセスが最もスムーズでおすすめです。
遺跡のチケットチェックポイントを抜け、緑に囲まれた道を周壁に沿って進むと、堂々たる「西塔門」が姿を現します。


この塔門は非常に立派な造りをしており、最初の見どころとしてインパクト抜群。
入り口には凛々しいシンハ像が左右に構え、まるで訪問者を静かに見守るかのような威厳を放っています。

さらに注目したいのが塔門上部の破風装飾!
そこには、ヒンドゥー神話に基づいた美しいレリーフが施されており、大蛇アナンタの上に横たわるヴィシュヌ神、そしてヴィシュヌのへそから誕生する創造神ブラフマーの姿が描かれています。宗教的・芸術的にも価値の高いスポットです。

遺跡を取り囲む森
西塔門をくぐると、丘の上にある本殿へと続くラテライト(Laterite)製の階段道が現れます。
この道の最大の魅力は、周囲を覆う豊かな森の存在!特に雨季には緑がいっそう濃くなり、木々の葉が陽光を優しく遮ることで、まるで“緑のトンネル”を歩いているかのような幻想的な雰囲気に包まれます。

勾配は比較的ゆるやかで、自然の空気を感じながら心地よく登ることができますが、湿気と苔で一部滑りやすくなる箇所もあるため、足元には注意が必要です。
階段を上りきった先には、まず現代の仏教寺院が現れ、その静かな佇まいが訪れる者を迎えてくれます。そして、その奥にひっそりと構えるのが、チャウ・スレイ・ヴィボルの本殿。自然と歴史が織りなす、特別な空間が広がっています。

手付かず状態の崩れた祠堂
チャウ・スレイ・ヴィボルの最大の見どころとも言えるのが、激しく崩壊した中央祠堂です。
長い歳月と自然の力にさらされ、建物はほとんど原型をとどめておらず、修復もほとんど行われていないため、他の整備された遺跡とは一線を画す“ありのまま”の姿を留めています。

木製の階段や歩道などの観光用設備もないため、崩れ落ちた巨石の上を自らの足で登りながら進んでいく感覚は、まさに遺跡探検そのもの。冒険心をくすぐられる体験が待っています!

建物全体の装飾は控えめながらも、偽扉や付柱(ピラスター)、回廊の一部には今なお美しい彫刻が残り、当時の芸術性を垣間見ることができます。
さらに、崩れた石に絡みつく巨木の姿がこの遺跡に独特の生命感を与え、まさに“自然と遺跡の共存”を実感できる場所です。











南麓にある建造物
チャウ・スレイ・ヴィボルの丘を下った南麓には、他のアンコール遺跡ではあまり見られない、独特な構造を持つ建造物がひっそりと残されています。

その用途は明らかになっていませんが、経典を保管する「経蔵」であった可能性も指摘されています。建物は田の字状の平面構造をしており、東側に小さな出入口がひとつだけ設けられているのが特徴です。

さらに注目すべきは、南側の壁面に設置された巨大な「ヨニ」の存在です。
このヨニは、コー・ケー遺跡群に見られるものと似た形状をしています。ここから流れ出る“聖水”が、かつて儀式や祈祷に使われていた可能性があり、神秘的な空間を感じさせます。歴史的用途の謎を残す、興味深いスポットです!

貯水池
チャウ・スレイ・ヴィボルの南西側には、かつての生活や儀式に使われていたと考えられる巨大な貯水池が残されています。現在ではほとんど水が干上がり、底まで見える状態となっていますが、かつては相当な深さと規模を誇っていたことがうかがえます。

チャウ・スレイ・ヴィボル遺跡|まとめ
チャウ・スレイ・ヴィボルは、アンコール遺跡群の中でも訪れる人が少ないマニアックな遺跡ですが、だからこそ味わえる静けさと神秘があります。
崩れたまま残された祠堂、森に包まれたラテライトの道、そして自然と調和する貯水池など、観光地化されていない“本来の遺跡の姿”に触れられるのが最大の魅力です。整備された遺跡では味わえない、冒険心をくすぐる探索体験は、遺跡や歴史に興味がある方にとって特別な思い出になるはず!
少し足を延ばしてでも訪れる価値のある、隠れた名所・チャウ・スレイ・ヴィボル。ぜひその魅力を体感してみてください!

次のカンボジア観光で、ひっそりと佇む神秘の寺院に足を運んでみませんか?