バコン遺跡は、アンコール王朝初期に建立されたヒンドゥー教初のピラミッド型寺院です。
現在のシェムリアップの地域に遷都する前、ハリハラーラヤが首都であった頃に国家鎮護寺院として創建されました。この地域の遺跡は「ロリュオス遺跡群」として呼ばれています。アンコール王朝初期の建築や美術の様式を辿るのに重要な役割を担っている遺跡です。
バコンってどんな遺跡?
ロリュオス遺跡群のピラミッド型寺院
バコン寺院は、ロリュオス遺跡群の一つであり、その中でも最大の規模を誇る遺跡です。5層のピラミッド型で構成されており、後のアンコール・ワットの原型になったとも言われています。
バコン寺院の魅力は何と言ってもそのスケールの大きさ!遠くから見ても目立つように、高くそびえ立つ中央祠堂が大きな存在感を放っています。
バコン寺院は、より壮大な遺跡に見えるように、遠近法による仕掛けが施されています。
積み重なっている5つの層は、実は格段の高さが異なっており、上部に進むにつれて低くなるように計算されています。例えば、1段目は4.1mですが、5段目は1.7mです。また、段の高さ以外にも、階段の脇に立つシンハ(獅子)の大きさも上段ほど小さくなっています。
このように上部をより小さくすることによって、本来よりも遠い位置(=高い位置)にあるように錯覚させる効果があるのです。特に地上から見上げたときに、より頂上部が高く感じられるようになっています。
旧都ハリハラーラヤの歴史
ここで少しアンコール王朝初期の歴史を確認してみましょう!
アンコール王朝のはじまりは、ジャヤヴァルマン2世が802年に聖山プノン・クーレンで即位の儀式を行ったことだと言われています。ここからヒンドゥー教による国家建設が始まりました。
当初、首都が置かれていたのが現在のロリュオスの地域であり、「ハリハラーラヤ」と呼ばれていました。この首都は3代目の王であるインドラヴァルマン1世によって創建されたと言われています。
しかし、4代目の王であるヤショーヴァルマン1世のときに後継者争いが勃発し、王宮が破壊されてしまったため、889年アンコールの地(現在のシェムリアップ)に遷都が行われました。
このように、ロリュオスの地域はわずかな期間だけ首都が置かれた地ですが、残された遺跡はアンコール王朝の初期の建築・美術様式を知るための重要な手掛かりになっています。
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バコン遺跡への行き方
バコン遺跡までは、シェムリアップ中心部から車・トゥクトゥクで約30分です。
市内中心部を抜けたら、あとはプノンペン方面にまっすぐ進むだけ。自転車で訪れる場合には、曲がる箇所が分かりにくいので、右手側にある看板に注意してください。プリア・コー遺跡の前を通って、バコン遺跡に向かいます。
ロリュオス遺跡群をセットで巡る
バコン寺院以外のロリュオス遺跡群も近くに集中しているので、セットで訪れるのがオススメです。アンコール王朝の初期に建立された遺跡の特徴を辿ることができます。
上記の他にも小規模の遺跡が近辺には散在していますが、損傷が激しいものも多いです。見学を希望する場合には、ツアーガイドさんなどに相談してみてくださいね。
Klook.com遠方の遺跡とセットのプランも
ロリュオス遺跡群の観光は、ほかの中距離・遠方の遺跡と組み合わせることが可能です。セットのツアーを催行している旅行会社もあるので、ぜひチェックしてみてくださいね。
1番のおすすめは、バンテアイ・スレイやクバール・スピアンと組み合わせたコース。郊外遺跡の見どころがギュっと詰まった濃いコースになっています。
バコン遺跡の見どころは?
バコン寺院はロリュオス遺跡群最大のスケールであり、アンコールの地の遺跡とはまた違った趣が楽しめます。
参道を守護するナーガ像
バコン寺院は、南北340m・東西380mの環濠に囲まれていて、東側の参道を通って中央に向かいます。
参道入り口のすぐ左手側には、すばらしい保存状態のナーガ像が配置されているので、要チェックです!7つの頭を持ち、圧倒的な存在感を放っています。
ナーガの胴体部分はそのまま欄干のように続いていますが、神様の体の一部なのでうっかり腰掛けないように気をつけてくださいね!
敷地内に建つ現代寺院
参道を渡ると、すぐ右手側に現代の仏教寺院(2010年改修)が建っています。壁面には様々な仏教のモチーフが描かれています。興味のある方は少し立ち寄ってみてもいいかもしれません。
僧侶がいた場合には、女性の方はできるだけ近づかないようにしましょう。修行中の僧侶が女性に触れるのはタブーとされています。
環状に配置された8つの小祠堂
ピラミッド型寺院の頂上に向かって進む前に、周囲を取り囲むように配置された8つの小祠堂をチェックしてみましょう。実はこれらの小祠堂のリンテル(まぐさ石)の部分には見事なレリーフが彫られており、保存状態も抜群です!
ついつい真っ先に頂上に登りたくなりますが、まずはじっくり周囲を散策してみましょう!
特に注目すべきは、寺院の西側に建つ6,7,8の小祠堂です(上記見取り図参照)。
6番北側のリンテル
マカラの口からマカラが次々と飛び出すユニークな図案が彫られています。それらの端にはナーガが描かれており、その上に小さな人物が乗っている姿も確認できます。
7番西側のリンテル
象にまたがる戦士の姿が描かれています。その隣には、カーラの上に座り、剣を携えた神の姿も彫られています。
8番東側のリンテル
蓮の花の上に神が座っています。それを囲むように配置された多くのナーガの姿が特徴的です。
見事な装飾の偽扉
小祠堂で注目すべきはリンテル(まぐさ石)だけではありません。3,4の小祠堂に施された偽扉の装飾もぜひチェックしてみてください!
ドアの取手の部分がライオンの頭の形をしています。とてもユニークなデザインですね!
シヴァ神に仕える聖牛ナンディン
バコン寺院には、4体の聖牛ナンディンの彫像が中央祠堂の東西南北に配置されています。ナンディンはシヴァ神に使える聖牛であり、乗り物としての役割を果たしていました。
どれも損傷が激しいのですが、西側(入り口と反対側)のナンディンは比較的良好な状態で残っています。
高くそびえ立つ中央祠堂
じっくりと周囲を散策したら、いよいよ頂上に向かって登っていきましょう!頂上まではそれほど急な階段ではありませんが、手すりなどは無いので足元には注意してください。
第1層から第3層の四隅には象の彫像が配置されています。特に北東側の彫像の保存状態が良いので、ぜひ第1層はぐるりと1周してみてください。
また、一段目の南側にあるシンハ像も要チェック! ほぼ完全に近い状態で残っているのはとても珍しく、尾まできちんと原型を留めています。
かつては壁面に浮き彫りが存在した箇所もあったのですが、欠けたり風化したりしてしまったものが多く、現在ではあまり残っていません。第5層の壁面や各門には一部原型をとどめているものもあります。
天気が良い日には、頂上から周囲を遠くまで見渡すことができます。辺りには高い建物が無いので視界はバッチリです!
実は、この中央祠堂の部分は12世紀に再建されたものだと言われています。建築様式や石の色が他の部分と異なっており、12世紀前半の特徴を表しているためです。
また、20世紀に再発見されたときには、大部分が崩壊しており、1936年から1943年にかけて再び再建が行われました。このように幾度もの改修を経て、現在にその姿を残しています。
デヴァター(女神)像も損傷を受けたものが多いのですが、現存している中では北東のデヴァター像が最も良好な状態です。細部の装飾も確認することができます。
バコン遺跡のポイントまとめ
ロリュオス遺跡群の象徴的存在とも言える「バコン遺跡」についてご紹介しました!
シェムリアップ中心部にある遺跡とはまた違った趣が味わえる場所なので、歴史や遺跡に興味がある方はぜひ足を伸ばしてみてくださいね。比較的お客さんの数は少なめなので、じっくりと鑑賞したいという方には特にオススメです。
バコン遺跡のすぐ近くにあるローカルのレストラン(Bakong My Village)もおすすめです!ランチや小休憩で利用してみてください。
アンコールワットや他の遺跡とはまたちがった趣を味わえる遺跡群です。ぜひシェムリアップ市外の遺跡にも足を伸ばしてみてください!