バクセイ・チャムクロンは、アンコール・トムの南大門のすぐ近くにある小型のピラミッド寺院です。
単祠堂タイプでシンプルな構造をしていますが、縦にスラリと伸びた姿と煉瓦の赤色が美しく、どことなく気品を感じさせる佇まいをしています。
意外と見落としがちな遺跡ですが、独特なスタイルを持つこちらの遺跡は一見の価値アリ!ぜひアンコール・トムなどを観光する際にセットで訪れてみてください。
Klook.comバクセイ・チャムクロンってどんな遺跡?
建設に携わった二人の王
バクセイ・チャムクロンの建設には二人の王が携わったと言われています。
一人目がハルシャヴァルマン1世です。ハルシャヴァルマン1世は、父であるヤショーヴァルマン1世及びシヴァ神に捧げるためにこの寺院を建立したと考えられています。
そして、最終的にバクセイ・チャムクロンを完成させた王がラージェンドラヴァルマン2世です。コー・ケーの地から再びアンコールに都を遷した際に寺院に手を加えました。
王を庇護した大鳥の伝説
バクセイ・チャムクロンという名は「翼で都を護る鳥」を意味します。
かつてアンコールが敵に包囲された際、大きな鳥が飛んできてその翼で王を庇護したという伝説に基づいています。
現在の遺跡の呼び名は、後世になって付けられたものばかりです。見学の際は、名前に着目してみるのもおもしろいですね。
バクセイ・チャムクロンへの行き方
バクセイ・チャムクロンは、ちょうどアンコール・ワットからアンコール・トムの南大門へ向かう途中にあります。
小規模な遺跡なので、途中でちょっと立ち寄ることも可能です。
すぐ隣には、夕日スポットとして有名なプノン・バケン寺院もあります。プノン・バケン寺院は丘の上にある遺跡です。
丘を登る途中にバクセイ・チャムクロンを見ることができます。森の奥に隠されたような姿も趣があって素敵です。ぜひプノン・バケンに行く際は探してみてくださいね!
Klook.comバクセイ・チャムクロンのポイント
バクセイ・チャムクロンは、ガイドブック等でもあまり大きく取り上げられていないので、見落としがちな遺跡ではありますが、森の中に凛と佇む姿はとても美しく、ひそかに人気を集めているスポットでもあります。
アンコール・トムの南大門のすぐ南側にあるので、ぜひ近くに来た際はバクセイ・チャムクロンにも少し足を伸ばしてみてください!
シンプルで洗練された佇まい
バクセイ・チャムクロンの魅力は、スラリと縦に伸びたシルエット。
神に捧げられた祠堂は天に向かってまっすぐ聳え立ち、シヴァ神の象徴であるリンガによく似た形をしています。
バクセイ・チャムクロンは、バコン寺院(初のピラミッド型寺院)よりも後に建設されました。さらにその後に続くピラミッド式寺院のプロトタイプの一つとして、試行錯誤を重ねながら建てられたのかもしれませんね。
現在はほぼ残っていませんが、祠堂の東側にはシンハ像と塔門の跡が残っています。跡の大きさを鑑みるに、割と立派な塔門だったようです。また、煉瓦の周壁がかつては存在していました。
中央祠堂の装飾
中央祠堂の装飾は必見です!
リンテル(まぐさ石)の中央には、アイラーヴァタと呼ばれる象に乗ったインドラ神が描かれています。
そして、少し分かりにくいですが両端にはガネーシャ(象の頭を持つ神)がいます。ガネーシャはヒンドゥー教で人気のある神様ですが、このように遺跡に登場するのは珍しいです。
そして、南・西・北側に設置された偽扉にもぜひ着目してください。
精緻で深い彫り込みが見事です。コロネット(側柱)の装飾の保存状態も良く、細部まで観察することができます。
中央祠堂の壁面には、デヴァターらしき姿がうっすらと残っています。
残念ながら欠けてしまっている箇所が多く特定は難しいですが、当時は化粧しっくい(スタッコ)が施され、彩色もされていたかもしれません。
東側の入り口の脇柱(Door Jamb)には、碑文が刻まれています。
奉納の詳細や、歴代の王たちへの賛辞が記されているそうです。
祠堂内に安置された涅槃仏
祠堂内には涅槃仏が安置され、今も地元の人々がお参りをしています。
創建当時はヒンドゥー教寺院としてシヴァ神に捧げられていましたが、後世に上座仏教の影響を受け、仏像が持ち込まれたようです。
このように後世(15世紀以降)に仏像が持ち込まれることは珍しいことではありません。
観光の注意点
中央祠堂に続く階段は、ひじょうに急で(傾斜約60度)、階段の幅や高さが一定になっていないので、上り下りの際は十分に注意してください。
実物は写真よりもさらに急に感じると思います! 数あるアンコール遺跡群の中でも特に危うい階段です。
「キツそうだな」と思ったら、無理して上らないのも大切です。安全第一で遺跡観光を楽しみましょう!
バクセイ・チャムクロン遺跡|まとめ
今回は穴場スポットの一つである「バクセイ・チャムクロン」遺跡をご紹介しました!
遺跡がお好きな方、ちょっとユニークな遺跡を見学したい方、写真撮影を楽しみたい方に特におすすめです。基本的に観光客がほぼいない場所なので、雰囲気のある写真を撮りたい方にはぴったり。
ただし、頂部までの階段がとても急なので、雨上がりなど足場が悪いときは無理して上らないようにしてください!
ヤショーヴァルマン1世は、ハリハラーラヤからアンコールの地に遷都を行った王です