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プラサット・プティ遺跡ガイド|ベンメリア近郊に残るナーガに守られた仏陀像

シェムリアップ郊外には、アンコール・ワットやベンメリアなどの有名遺跡だけでなく、ガイドブックにはほとんど掲載されていない小さな遺跡も数多く残されています。

ベンメリア遺跡の東側に位置する「プラサット・プティ(ប្រាសាទផ្ទី / Prasat Phty)も、その一つです。かつてバライ(貯水池)として利用されていた人工池の中央に建てられ、遺跡の中心にはナーガに守られた巨大な仏陀像が安置されています。

遺跡自体は小規模ですが、水辺にたたずむ仏陀像や、一般的なクメール寺院とは異なる珍しい構造は一見の価値があります!

CN編集部

今回の記事では、プラサット・プティの歴史や見どころ、シェムリアップからの行き方を、実際に訪れた様子とともに詳しくご紹介!

プラサット・プティとは?

プラサット・プティ(ប្រាសាទផ្ទី / Prasat Phty)は、ベンメリア遺跡の東側に位置する小規模な仏教遺跡です。ベンメリアの環濠から東へ約1300メートル離れた場所にあり、かつてバライ(貯水池)として利用されていた人工池の中央に建てられています

「ប្រាសាទផ្ទី / Prasat Phty」という名称の他に、「Prasat Veal Phty」や「Veal Phtei Temple」と表記されることもあります

遺跡は、アンコール地域からコー・ケー遺跡群へと続く古道沿いに位置し、砂岩とラテライトを組み合わせて造られています。

一般的なクメール寺院とは異なる珍しい構造を持ち、湖の中央に安置された「ナーガに守られた仏陀像」が最大の特徴です。

プラサット・プティ(ប្រាសាទផ្ទី / Prasat Phty)
CN編集部

ガイドブックにもほとんど掲載されておらず、これまで観光客にはあまり知られていない超マイナー遺跡でした。しかし近年は、SNSなどで美しい写真や映像が紹介される機会も増え、ベンメリア周辺の新たな観光スポットとして少しずつ注目を集めています!

プラサット・プティの歴史

プラサット・プティには建立年代を明確に示す碑文などは確認されていません。しかし、仏陀像の造形や遺跡の特徴から、ジャヤヴァルマン7世の治世にあたる12世紀後半ごろに造られた仏教遺跡と考えられています。

長い年月の中で崩壊が進んでいましたが、2021年には修復作業が行われ、現在の姿へと整備されました。

ジャヤヴァルマン7世の時代に造られた仏教遺跡

プラサット・プティは、遺跡に残る仏陀像の造形などから、12世紀後半ごろに造られたと考えられています*諸説あり

当時は、大乗仏教を篤く信仰したジャヤヴァルマン7世の治世にあたり、遺跡にもこの時代に広まったバイヨン様式に近い特徴が見られます。ただし、湖の中央に巨大な仏陀像を安置した詳しい目的については、現在も明らかになっていません。

フランス人研究者による過去の調査記録も残されており、当時は「バラン(Balang)」と呼ばれていた記録があります。

一方、現在使われている「プティ(ផ្ទី)」は地元で呼ばれている名称で、この地域に生育する植物の名前に由来する可能性も指摘されています。建造当時は現在とは異なる名称で呼ばれていたのかもしれません。

CN編集部

私たちが実際に訪問した7月のタイミングでは、水がほぼ干上がっていましたが、航空写真を見ると「貯水地」の中央に位置していることがはっきりと分かりますね!

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2021年にアプサラ機構が修復

長い年月の中で崩壊が進んでいたプラサット・プティは、2021年4月からアプサラ機構による修復が行われ、同年5月末に作業が完了しました。遺跡内に散乱していた砂岩やラテライトの石材を調査し、本来の構造に近い形になるよう再配置したことで、遺跡の特徴的な姿がよみがえっています。

中央に安置された「ナーガに守られた仏陀像」は、頭部が失われていたため、修復の際に新たな頭部が制作されました。一方、仏陀像の胴体や、その背後で仏陀を守る7つの頭を持つナーガには、建造当時の石材が残されています。

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現在見られる姿には新たに補われた部分もありますが、数世紀前のクメール仏教美術を今に伝える貴重な遺構です

プラサット・プティ(ប្រាសាទផ្ទី / Prasat Phty)

プラサット・プティの見どころ

プラサット・プティ最大の魅力は、湖の中央に立つ巨大な「ムチャリンダ仏」と、ほかの遺跡ではあまり見られない独特の構造です。仏像の造形だけでなく、水と仏教信仰との関係にも注目すると、この小さな遺跡の奥深さがより伝わってきます。

ナーガに守られた巨大な仏陀像

遺跡の中央には、台座を含めて高さ約6.5メートルの巨大な仏陀像が安置されています。仏陀の背後には7つの頭を持つナーガが広がっており、この図像は一般に「ムチャリンダ仏」と呼ばれます。

プラサット・プティ(ប្រាសាទផ្ទី / Prasat Phty)

仏教説話では、悟りを開いた仏陀が瞑想を続けていた際に激しい暴風雨が起こり、ナーガの王ムチャリンダが現れて、その身体と頭で仏陀を雨風から守ったと伝えられています。プラサット・プティの仏像も、この場面を表現したものと考えられます。

ムチャリンダ(竜王)の存在は、日本の禅宗系の寺院の天井絵などにも描かれていることがあります。妙心寺法堂に描かれている『雲龍図』(狩野探幽作)などが有名です。

ナーガに守られた仏陀像は、ジャヤヴァルマン7世の治世に広く見られるクメール仏教美術の代表的なモチーフです。修復された頭部と、当時の石材が残る胴体やナーガを見比べながら、約800年前の造形に注目してみてください。

湖の中央に造られた珍しい構造

プラサット・プティは、ベンメリア東側のバライの中央に造られています。周囲にはラテライト造りの基壇が巡らされ、その内側には、ほぼ円形に積まれたラテライトの構造物があり、その上にムチャリンダ仏が安置されています。

一般的なクメール寺院では、中央祠堂の内部に神像や仏像を安置する形式が多く見られます。しかし、プラサット・プティでは大きな祠堂を中心とせず、仏陀像そのものが遺跡の中心となっている点が特徴です。

また、雨季と乾季で景観が大きく変わるのも見どころです。乾季には周囲の地面が現れますが、水量が増える時期には、仏陀像がまるで水の上に浮かんでいるような神秘的な姿を楽しめます。

プラサット・プティ(ប្រាសាទផ្ទី / Prasat Phty)
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湖の水は「聖なる水」だった?

プラサット・プティが湖の中央に建てられた詳しい理由は、現在も明らかになっていません。

ただし、仏陀像の両手を重ねた姿が、病を癒やす仏として信仰された薬師仏「バイシャジャグル」の図像と似ていることから、湖の水と治癒や祝福が結び付けられていた可能性が指摘されています。

ジャヤヴァルマン7世の時代には、仏教信仰と医療・治癒が深く関係していました。水を通じて病を癒やすという考え方は、同じくジャヤヴァルマン7世期に造られたニャック・ポアン遺跡との共通点も感じさせます。

プラサット・プティの湖水も、人々に恵みや癒やしをもたらす「聖なる水」と考えられていたのかもしれません。ただし、これは仏像の造形や立地から導かれた仮説であり、建立目的を断定できる史料は確認されていません。

プラサット・プティ(ប្រាសាទផ្ទី / Prasat Phty)

プラサット・プティへの行き方

プラサット・プティは、シェムリアップ市内からベンメリア方面へ向かい、ベンメリア遺跡の東側へ進んだ場所にあります。

貯水池への入り口までは車で約1時間が目安です。トゥクトゥクでも訪問できますが、車より時間がかかるため、ベンメリア観光とあわせて車を手配すると効率よく巡れるでしょう。

プラサット・プティ(ប្រាសាទផ្ទី / Prasat Phty)
ベンメリア遺跡から東側に伸びる古道

道路沿いにはプラサット・プティを示す看板が設置されていますが、そこから遺跡まで明確な道はありません。今回は現地ガイドと地元の方の案内でたどり着きましたが、初めて訪れる方が自力で遺跡を見つけるのは難しいため、現地を知る人に同行してもらうことをおすすめします。

プラサット・プティ(ប្រាសាទផ្ទី / Prasat Phty)
案内板などは無い

また、雨季は貯水池の水位によってアクセス方法が変わります。小舟を出せるほど水位が上がれば水上から向かえる場合もありますが、水位が中途半端だと舟も徒歩も難しくなる可能性があります。

今回訪れた際は水がほとんどありませんでしたが、草が生い茂っていて歩きにくく、一部では靴を脱いで小川を渡る必要もありました。訪問時は汚れてもよい服装と歩きやすい靴を選び、現地の状況を事前に確認しておくと安心です。

プラサット・プティ(ប្រាសាទផ្ទី / Prasat Phty)
小川のようになっている道

2026年7月時点では、プラサット・プティの見学にチケットは必要ありませんでした。

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まとめ|ベンメリアとあわせて訪れたい小さな仏教遺跡

プラサット・プティは、ベンメリア遺跡の東側に広がるバライ(貯水池)の中央に残る、小規模な仏教遺跡です。最大の見どころは、7つの頭を持つナーガに守られた巨大な仏陀像。湖の中央に仏陀像そのものを安置した珍しい構造からは、当時のクメール仏教における水と信仰の深い結び付きを感じられます。

長い年月の中で崩壊が進んでいましたが、2021年にアプサラ機構による修復が行われ、現在の姿へとよみがえりました。遺跡自体はコンパクトなため、ベンメリア観光とあわせて訪れるのがおすすめです。

ガイドブックにはほとんど掲載されていないマイナー遺跡ですが、近年はカンボジア国内のSNSなどでも紹介され、隠れた観光スポットとして少しずつ注目を集めています。アクセスには少し苦労しますが、ベンメリア周辺の珍しい遺跡を巡りたい方は、ぜひ訪れてみてください!