
ロリュオス遺跡群の一つであるプリア・コー遺跡は、アンコール最古の寺院と言われています。879年にインドラヴァルマン1世により創建されました。
「プリア・コー」とは「聖なる牛」という意味です。3体のナンディン(聖牛)の彫像が祠堂を向くように設置されていることが由来しています。小規模の遺跡でありながら、リンテルの浮き彫りは保存状態が良く、細部まで美しく観察することができます!
プリア・コーってどんな遺跡?

802年にジャヤヴァルマン2世がプノンクーレンで転輪聖王として即位を宣言したことがアンコール王朝のはじまりと言われています。ジャヤヴァルマン2世の即位後、王国の実務はロリュオス地域(ハリハラーラヤ)で行われるようになりました。
1代目の王であるジャヤヴァルマン2世から、4代目のヤショーヴァルマン1世の即位までの約80年間、王国の中心となっていた場所です。

9世紀後半ころからハリハラーラヤ都城では、バライ(貯水池)である「インドラタターカ」の建設工事が進んでいました。安定的に水を供給できるようになると、生産可能な食糧が増え、多くの人的資源を使役できるようになります。

バライ建設により、9世紀にはじめて二期作(もしくは三期作)の水稲耕作が開始されました。この結果、地域経済が急速発展したと考えられています!
その結果、ロリュオス地域では877年から12年かけて大寺院を3ヶ所同時に建設することが可能になりました。同時並行で、木造の王宮の建設も進められていたようです。

王朝の礎を築いた「インドラヴァルマン1世」
プリア・コー寺院やバコン寺院などを建設したインドラヴァルマン1世は、アンコール王朝約600年にわたる繁栄の基盤を築いた王として高く評価されています。
インドラヴァルマン1世の在位自体は12年間という短い期間ですが、後世に続く重要な功績を残しました。古代インド的宇宙観を象徴する都城、大王宮、国家鎮護寺院、そして農業経済の基盤となるバライ(貯水池)の造成は、後世の王たちが目指すべき模範として示されています。

インドラヴァルマン1世は、その政治的手腕も高く評価されています。初代の王として即位したジャヤヴァルマン2世の妃として自分の娘を後宮に送り込み、そして自身の孫であるジャヤヴァルマン3世を王位につかせました。
孫の後ろ盾として実権を握り、ジャヤヴァルマン3世の逝去後には高齢でありながら、自身が王として即位を果たします。その後、短い在位期間の中で数々の業績を達成していきました。

祖先を祀るアンコール最古の寺院
プリア・コー寺院は、今は亡きアンコール王朝の古都ハリハラーラヤで一番はじめに建設されたヒンドゥー教寺院です。
879年にインドラヴァルマン1世によって建設されました。

プリア・コー寺院は、祖先の霊を祀るための寺院であったと考えられています。
アンコール王朝の偉大な初代王であるジャヤヴァルマン2世を筆頭に、自身の父や祖父、そして王妃たちが祀られました。こうした祖先崇拝は原カンボジアの名残とも言えます。

祖先たちは死後にシヴァ神と一体化したと考えられており、祠堂にはシヴァ・リンガが設置されました。このようにして、土着の信仰とヒンドゥー教の融合が少しずつ進められました。
プリア・コー遺跡までの行き方
プリア・コー寺院のある「ロリュオス遺跡群」までは、シェムリアップで車から20〜30分ほどです。
国道6号線をプノンペン方面にまっすぐ進むと、右手側に遺跡へ続く案内板が見えてきます。


自転車で訪れることも不可能ではありませんが、国道は大型のトラックも走っているので、走行の際は十分に注意してください!
ロリュオス遺跡群をセットで巡る
プリア・コー寺院を訪れるなら、セットでロリュオス遺跡群を観光するのがおすすめです!
ロリュオス遺跡群で最大規模のピラミッド型寺院であるバコン、そしてインドラタターカの中心にあったと考えられるロレイは見応えがあります。

また、ベンメリア遺跡やコー・ケー遺跡群に向かう途中でロリュオス遺跡群に立ち寄ることも可能です。
セットで組まれているツアーもあるので、効率的にたくさんの遺跡を訪問したい場合には、ぜひ活用してみてください!
Klook.comプリア・コーの向かいには影絵工房
プリア・コー寺院を道を挟んだ向かいには、「スバエク」と呼ばれる伝統的な影絵の工房があります。ここは孤児院も兼ねていて、子どもたちが製作した作品を購入することも可能です。

気軽に立ち寄ることのできる場所なので、プリア・コーを訪れた際はぜひ覗いてみてください。軽くて丈夫なスバエクの作品はお土産としてもピッタリです!手のひらサイズのコンパクトな作品も売られています。
スバエクについて詳しく解説!
プリア・コー遺跡の見どころ
かつては東西500m、南北400mの環濠が囲み、二重のラテライトの周壁が存在していましたが、現在では崩壊している部分が大半です。
観光する場合には、基本的に遺跡の中央のエリアを鑑賞することになります。
コンパクトな規模の遺跡なので、20〜30分程あれば十分かと思います。ぜひ気軽に立ち寄ってみてください!
聖域を守護する聖牛ナンディン
プリア・コー寺院は、その名の通り3体のナンディン(聖牛)が寺院を守護するように配置されています。


クメール語で「プリア Preah」は「神」、「コー Ko」は「牛」を意味します
ナンディンは、シヴァ神の乗り物とされる乳白色の牡牛です。シヴァ神を祀った寺院では、ナンディンの彫像をよく見かけます。

神と先祖に捧げられた6つの祠堂

約1.5mの高さの基壇上には、6つの祠堂が並んでいます。くわしい理由は判明していませんが、②東側中央と⑥西側右の祠堂は、ほかの祠堂と配置がずれているのが特徴的です。

これら6つの祠堂は、インドラヴァルマン1世の先祖の霊をそれぞれ祀っています。それぞれ死後の呼び名が授けられ、シヴァ神とこれらの王たちが一体化したことを象徴しました。
- プリティヴィンドレシュヴァラ神
インドラヴァルマン1世の父、プリティヴィンドラヴァルマン - パラメシュヴァラ神(至上神)
初代の王、ジャヤヴァルマン2世 - ルドレシュヴァラ神
インドラヴァルマン1世の母方の祖父、ルドラヴァルマン1世 - ①の正室
- ②の正室
- ③の正室
西側(後列)の祠堂は前列よりひと回り小さく作られています。
また、前列の祠堂には男性であるドヴァラパーラ(門衛神)が彫られているのに対し、後列にはデヴァター(女神)が彫られている点にもぜひ注目してみてください。

各祠堂の「偽扉」やリンテル(まぐさ石)、柱にも美しい装飾が施されています。レンガの部分は損傷が激しいのですが、砂岩で作られた部分には今も繊細な彫刻が残っています。

基壇に続く3つの階段の両脇には、シンハ(獅子)の彫像が並んでいます。シンハは日本における狛犬と似たような存在です。プリア・コー遺跡では、美しいシンハ像がかなり良好な保存状態で残っています。

リンテルに刻まれた美しい浮き彫り
プリア・コー寺院は、ロリュオス遺跡群で最も古い遺跡でありながら、砂岩部分には繊細で精巧な装飾が今も残っています。

上の写真はリンテル部分に施された彫刻です。中央に大きく口を開けたカーラがいて、その上に小さな神が座っています。下側には3つの頭を持ったナーガ、上側には馬に騎乗した姿が描かれており、躍動的な印象を与える意匠です。

上記は珍しくガルーダが大きく中央に配置されたデザインです。ガルーダが両脇のナーガの尻尾を掴んでいます。彫りが深く、力強さと華やかさを兼ね備えたリンテルになっています。

現在では、崩れてしまっている部分も多々ありますが、完成当時は祠堂を覆うように、数々の装飾が施されていたことが想像できます。当時の職人たちの技術力の高さと芸術センスが感じられる遺跡ですね。

当時は石やレンガの上に白い漆喰を塗っていたのではないか、と言われています。さぞ神々しい姿だったにちがいありません!
遺跡に刻まれた碑文
プリア・コーの壁面には、写真のような碑文が刻まれています。かつての王朝や社会の仕組みを知るための重要な考古学的史料です。
かつてのカンボジアでは、古クメール語とサンスクリット語が併用されていたと言われています。主に当時の寄進先や寄進品目などの目録や儀式の記録などが記されているそうです。碑文解読の研究は今も進められています。

プリア・コー遺跡のポイントまとめ
プリア・コー遺跡は、小型の寺院でありながら歴史的価値が詰まった魅力たっぷりの場所です。
今から約1200年前にこの場所でアンコール王朝の礎が築かれたのかと思うとワクワクしますね!ぜひ当時の様子を思い浮かべながら、観光してみてください。

くわしい歴史や逸話を知っていると遺跡観光がさらに楽しくなりますよ!せっかくならガイドさん付きの観光がオススメです!


























ロリュオス遺跡群を訪れるなら、ぜひともじっくりと鑑賞したい遺跡です!