
カンボジア・シェムリアップ郊外にある「ベンメリア遺跡」は、自然に飲み込まれたような神秘的な姿で、訪れる人々を魅了しています。
アンコールワットから約60kmの距離にありながら、観光客の数は比較的少なく、静かに遺跡を巡りたい方に最適なスポットです。
崩れかけた石造りの回廊や木々に覆われた寺院跡は、まるで映画のワンシーンのような世界観を感じさせ、物語の舞台に入り込んだような感覚を味わえます。
ベンメリア遺跡とは?歴史や特徴をわかりやすく解説
カンボジア・シェムリアップ郊外に位置するベンメリア遺跡は、自然と調和した幻想的な姿で知られるクメール王朝時代の寺院です。アンコール・ワットと似た構造を持ちながら、手つかずの状態が多く残されており、独特の雰囲気を楽しめます。
建設時代と歴史的背景|12世紀クメール王朝の寺院建築
ベンメリア遺跡は、12世紀初頭に即位したクメール王朝のスールヤヴァルマン2世の時代に建立された可能性があると考えられています。彼はアンコール・ワットを建築した王としても知られ、ベンメリアもその建築スタイルや宗教的構造に多くの共通点を持っています。*地方寺院として地元有力者たちが建設したという説もある

寺院の中心にはヒンドゥー教の宇宙観を象徴する中心祠堂があり、かつては東西南北に広がる参道や外壁が備えられていました。規模はアンコール・ワットに匹敵するとされ、当時の技術の高さがうかがえます。
現在では建造当時の詳細な記録はほとんど残っていませんが、王都アンコールからの宗教的・軍事的な要衝として重要な役割を担っていたと推定されています。

アンコールワットとの共通点と違いとは?構造の類似点に注目
ベンメリア遺跡は、12世紀中頃に建てられたと言われていますが、実はまだ詳しいことはわかっていません。多くの遺跡は碑文とセットで見つかることが多いのですが、ベンメリア遺跡は決め手となる碑文が欠落しているため、建築年代については謎に包まれています。


ベンメリアは「蓮の池/花束の池」という意味です。環濠に蓮の花が咲いていたり、花のモチーフが装飾として彫られていたりします。
ベンメリア遺跡は、アンコール・ワットとほぼ同時期に建てられたことから、その構造や設計思想に共通点が多く見られます。たとえば、中央祠堂を中心とした同心円状の配置、回廊や塔門の様式などが非常によく似ています。

しかし、最大の違いは「保存状態」と「観光開発の進み具合」にあります。アンコール・ワットは綿密に修復されて世界遺産として整備されている一方、ベンメリアは崩壊が進んだままの状態が多く、修復よりも「ありのままの姿」を体感できる場所として知られています。

訪問者にとっては、より「手つかずの歴史」を感じられるという意味で、ベンメリアは一種のタイムカプセルのような魅力を持っています。

『天空の城ラピュタ』のモデル?
ベンメリア遺跡は、ジブリ映画『天空の城ラピュタ』のモデルであると紹介されていることもありますが、本当でしょうか。
残念ながら、その可能性はとても低いです。映画が公開された1986年は、まだベンメリア遺跡に一般客が立ち入ることはできませんでした。国内の混乱(内戦状態)が続いており、カンボジアへの渡航自体もかなり難しかったはずです。観光可能になるまで国外にその存在がほとんど知られていなかったであろう状況を鑑みると、モデルにされた可能性は限りなく低いと思われます。
しかしながら、崩れた遺跡に木の根が絡みつく姿は、たしかに「ラピュタ」を彷彿とさせますね!物語の世界に入り込んだような感覚を楽しめます。

地雷撤去により、2001年から観光可能に
ベンメリア遺跡は1990年代まで、周辺に地雷が残されていたため立ち入りが非常に危険とされていました。しかし、2000年前後から本格的な地雷除去作業が開始され、2001年以降、安全が確保されたエリアについて一般観光が許可されるようになりました。

観光整備は最小限に抑えられていますが、主要な見学ルートや橋は整備されており、安全に見学できる状態が維持されています。現在ではシェムリアップからの日帰り観光地としても人気が高まっており、ツアーやチャーター車で訪れる旅行者が増えています。

それでもなお、遺跡外縁部には立ち入り禁止エリアが残っている可能性もあるため、観光時は必ず現地ガイドや案内板に従って行動することが大切です。

ベンメリア遺跡への行き方
ベンメリア遺跡は、シェムリアップ市内から北東に約60kmの位置にあります。車やトゥクトゥクで行くのが一般的で、片道1時間半〜2時間ほどかかります。シェムリアップ・アンコール国際空港に向かう途中の新道路を利用するルートが最も早いです。
ルートによっては、途中は砂埃が激しい部分もあるので(特に乾季)、道中の快適さを求めるならトゥクトゥクよりも車の移動がオススメです。

トゥクトゥクで行く場合には、砂埃よけのマスクやサングラスがあると多少緩和されるかもしれませんね

トゥクトゥクをチャーターする場合には、往復で30ドル前後が相場です。車の場合には、その2倍前後の価格になります。他の遺跡と組み合わせる場合には、距離によって料金が変わるのでご注意ください。
観光にはアンコールパスまたは独自チケットが必要
2020年よりベンメリア遺跡は、アンコールパス(アンコール遺跡群の入場券)の対象遺跡となりました。
また、2025年よりアンコールパスに加えて「単独チケット」でも入場が可能です。アンコールパスを持っていない場合は、「10ドル」でベンメリアの単独チケットを購入してください。
アンコールパスを購入する際には、チケットの有効日数に合わせて、観光のスケジュールを事前に計画しておきましょう。ベンメリア遺跡の場合には、少なくとも半日は必要です。

他の遺跡とセット観光がおすすめ
もしもスケジュールに余裕があるなら、他の遺跡とセットで観光するコースがおすすめです。
特に「バンテアイ・スレイ」と組み合わせたコースは、観光客にとても人気があります。また、クバール・スピアンも「独自チケット」で入場することができる遺跡なので、アンコールパスが無くても観光できます。

安心&便利な
ガイド付きツアーを検索!
ベンメリア遺跡の見所!
ベンメリア遺跡の見所は、何といっても「森に埋もれた遺跡」の姿です。遺跡が発見された当時に近い状態を楽しむことができます。
しかし、それ以外にも壁面に残されたヒンドゥー教のレリーフや見事なナーガ像など、見どころはたくさんあるので、ぜひチェックしてみてくださいね!
南側の参道からスタート
駐車場のすぐ脇に南側の入り口があります。
ベンメリア遺跡は、南北880m、東西1030mの環濠に囲まれており、観光客は南側の橋を渡って中に入っていきます。参道がまっすぐ続いているので、それに従って進んでください。

中央伽藍の全体像
ベンメリア遺跡は崩壊している箇所が多いため、観光のためのルートが限定されています。遺跡としての正面は東側ですが、観光の際には南参道から進み、第2回廊の脇から中に入っていきます。

基本的に木製の通路に沿って進んでいけば大丈夫です!石が崩れてくる可能性もあるので、指定されているルート以外には立ち入らないようにしましょう。


遺跡の中はまるで迷路のようですが、まずは中央エリアを目指して進みましょう。所々、木製の歩道や階段が設置されていますが、石の上を自分で通る箇所も一部あります。

遺跡内の見どころとなるレリーフは意外と見落としがちなので、ガイドさんと一緒に観光するのがオススメですよ!


崩壊した遺跡と自然の融合|現在のベンメリア遺跡の姿
現在のベンメリア遺跡は、自然に包まれた神秘的な姿が大きな特徴です。石造建築は長い年月の中で倒壊し、その上を苔や蔦が覆い、巨大な樹木が建物の間から根を張っています。
まるで遺跡が森に吸い込まれたような光景は、他のアンコール遺跡では見られない独特の魅力を放っています。

遺跡内部には、崩れた石をまたぎながら進む探検気分のルートが残されており、自然と歴史が融合した空間を五感で体験することができます。観光整備は最低限にとどめられており、人工的な要素が少ないのも人気の理由のひとつです。

写真映えするスポットも多く、静寂の中に佇む壮大な遺構は、旅のハイライトとなることでしょう。

遺跡の中に入ると、まるでタイムスリップしたような不思議な感覚が味わえます!密林に飲み込まれた遺跡のイメージそのものですね。
第2回廊の北側には、光の差し込まない通路があります。どういった目的で使われていたのか明らかになっていません。足元に注意して進んでくださいね。


美しい貴重な装飾
ベンメリア遺跡は損傷が激しく、当時の原型をあまり留めていませんが、いくつかの貴重なレリーフは今も残っています。特に入口付近の破風やリンテルは見事なので、ぜひ足元に注意しながら、頭上にも目を向けてみてください!

サイに乗るアグニ神
アグニ神は、赤色の体に炎の衣を纏ったインド神話の火神です。サイに乗った姿はとても珍しいので、ぜひお見逃しなく!

炎の中に身を投じるシータ姫
「ラーマーヤナ」物語の一場面です。シータ姫が自らの身の潔白を証明するために炎の中に身を投じるシーンが描かれています。

乳海攪拌とヴィシュヌ神
ヒンドゥー教の創世神話である「乳海攪拌」は、アンコール遺跡のあらゆる場面で描かれています。こちらのリンテル(まぐさ石)は風化がだいぶ激しいですが、亀王クールマの姿と左右でヴァースキ(蛇)を引っ張り合う神々と阿修羅の姿が見てとれます。

保存状態が抜群のナーガ像
ベンメリア遺跡のナーガ(蛇)は保存状態が大変良いことで有名です。南側の参道には、大変美しいナーガ像が設置されています。2009年に土中から発見されたもので、細部まできれいに残っています。

また、南テラスの欄干にあるナーガも保存状態が良いため、「Best of Naga」とも呼ばれています。頭部が大きく欠けることなく、細部の装飾がこれほどはっきりと残っているナーガは大変貴重です。

ナーガについてはこちらでも紹介しています!
ベンメリア観光の注意点
石を上り下りする箇所もあるので、動きやすい服装がオススメです。蚊も多いので、長ズボンが一番良いかもしれません。
また、一部の石や木製の階段には苔が生えている箇所もあります。特に雨季は滑りやすくなっているので、安全のためにも歩きやすい靴で訪れましょう。

雨が大量に降る時期になると、遺跡内に水が溜まり大変幻想的な光景が広がります。一方で、足元がさらに滑りやすくなるため、ぜひ動きやすい服装と足元で訪問してください。

また、一番きれいなトイレは、チケットポイントの近くにあります。移動時間が長くなりがちなので、トイレはここで済ませておきましょう。一応ベンメリア遺跡の敷地内(南側)にもトイレがあるので、お急ぎの場合はそちらを利用してください。
遺跡の入口近辺には売店や小さな食堂があります。ここで食事をしたり、飲み物を買ったりすることができます。暑い時期はここで一休みしてもいいかもしれませんね。
ベンメリア遺跡の鑑賞ポイントまとめ!
ベンメリア遺跡は、アンコール・ワットと同時期に建てられた神秘的な寺院で、崩壊した石造建築と密林が織りなす幻想的な風景が魅力です!
シェムリアップからのアクセスも良く、日帰り観光にも最適。観光地化が進む他の遺跡とは異なり、自然と歴史が共存する唯一無二の空間を体験できます。
今回の記事では、ベンメリア遺跡の歴史や見どころ、アクセス方法、観光時の注意点まで詳しく解説しました。カンボジア旅行で一味違う遺跡探訪を楽しみたい方は、ぜひベンメリア遺跡を旅の候補に加えてみてください。

シェムリアップからは、やや遠い位置にありますが、一見の価値アリの遺跡です!ぜひ独特な世界観を堪能してきてください。



![klook [クルック]でカンボジア現地ツアーを簡単&お得に予約!](https://cambodianote.com/wp-content/uploads/2024/03/top_eyecatch_122-485x286.jpg)























こちらの記事では、ベンメリア遺跡の見どころ、アクセス方法、観光時の注意点などを詳しく解説。アンコール遺跡群とはひと味違う、幻想的な冒険を楽しみたい方におすすめです!