プラサット・クラヴァンは、921年に建てられたヒンドゥー教の寺院です。すべてがれんが造りで、5つの小さな祠堂が横一列に並んでいます。
遺跡自体はとてもコンパクトですが、塔内に描かれた神々のレリーフは見応え抜群! 1964年から修復が行われ、今も良好な保存状態を保っています。
プラサット・クラヴァンってどんな遺跡?
プラサット・クラヴァンは、921年にハルシャヴァルマン1世によって建てられたヒンドゥー教寺院です。
この寺院はヴィシュヌ神を中心に祀っていて、中央塔にはヴィシュヌ神をモチーフにした浮き彫りが3面に描かれています。
れんが造りの各祠堂はシンプルな外観をしていますが、内部にはそれと対照的に躍動感あふれる華やかな装飾が施されています。
クラヴァンとは、良い香りがする花の名前です。まさにその名にふさわしく、優美で芸術性の高い寺院と言えますね。
コンパクトな規模の遺跡ではありますが、プラサット・クラヴァンの美しいレリーフは一見の価値アリ!
プラサット・クラヴァンへのアクセス
プラサット・クラヴァンは、「小回りコース」と呼ばれる定番ルートの遺跡の1つです。近くにはバンテアイ・クデイやスラ・スランなどの見どころもあります。
安心&便利なツアーを活用!
プラサット・クラヴァンまでは、シェムリアップの街の中心部から車やトゥクトゥクで20〜25分ほどです。単体としては規模の小さい遺跡なので、ぜひ他の遺跡とセットで訪問してみてください。
プラサット・クラヴァンの見どころ
ここでは、プラサット・クラヴァンの見どころを紹介します。
- 神々に捧げられた5つの祠堂
- ヴィシュヌ神を描いた三面の浮き彫り
- ラクシュミーを描いた浮き彫り
- 南側の祠堂に安置されたリンガ
- 入り口の柱に刻まれた碑文
- 美しいまぐさ石や柱の装飾
神々に捧げられた5つの祠堂
プラサット・クラヴァンは、5つの祠堂が南北に横並びになっています。それぞれの祠堂は、下記の通りヒンドゥー教の神々を祀っていました。
中央の3塔は、ヒンドゥー教の三大神であるブラフマー神・ヴィシュヌ神・シヴァ神を祀っています。両脇の少し小さめの祠堂は、それぞれヴィシュヌとシヴァの神妃であるラクシュミーとウマに捧げられたものです。
こちらの記事もチェック!
ヴィシュヌ神を描いた三面の浮き彫り
プラサット・クラヴァンの見どころは、やはり中央塔の内部に刻まれた3面のレリーフです! いずれもヴィシュヌ神の姿を描いています。
正面(西面)に描かれているのは、8本腕のヴィシュヌ神の姿です。その周りには、瞑想する人々の姿がいくつも刻まれています。
北面(入り口から見て右手側)に描かれているのは、ガルーダに乗ったヴィシュヌ神の姿です。
ヒンドゥー教において、ガルーダはヴィシュヌ神のアヴァター(乗り物)としての役割を担っています。
南面(入り口から見て左手側)に描かれているのは、4本腕のヴィシュヌ神です。3歩で世界をまたぐ姿が表現されています。
それぞれの手が持っているアイテムにもぜひ着目してみましょう!
- チャクラ[円盤状の武器]
- 棍棒[知力と権力の象徴]
- シャンカ[笛として使われるほら貝]
- 蓮華[ヒンドゥー教の象徴]
それぞれの持ち物に意味があるのがおもしろいですね!
ラクシュミーを描いた浮き彫り
一番北側の塔には、ヴィシュヌ神の妻であるラクシュミーの姿が描かれています。これだけのサイズでラクシュミーが描かれているのは稀です。
その美しさから「れんが色の女神」と呼ばれることも。内部のレリーフは、風雨による侵食が少なかったため、1000年以上経った今も美しく残っています!
南面(入り口から見て左手側)には、4本の腕を持つラクシュミーの姿が描かれています。これは夫であるヴィシュヌ神の姿を受け継いだ形です。
まるで一枚の絵のように、調和の取れた美しさがありますね。数あるアンコール遺跡群のレリーフの中でも特に完成度が高い壁面です。
西面(正面)にもラクシュミーと瞑想する人々の姿が描かれています。
南側の祠堂に安置されたリンガ
南端の塔は、シヴァ神の妻であるウマに捧げられたものだと言われています。
こちらの内部にはレリーフなどはありませんが、代わりにリンガが安置されています。リンガはシヴァ神の象徴です。四角い台座はヨニと呼ばれるもので、通常リンガがこの上に置かれます。
入り口の柱に刻まれた碑文
祠堂の入り口部分の柱には碑文が残っています。この碑文から、プラサット・クラヴァンが921年に創建されたことが判明しました。
よく見てみると、現在のクメール語に近い形をしていますね! こうした碑文を解読することによって、カンボジアの遺跡研究は進められてきました
美しいまぐさ石や柱の装飾
プラサット・クラヴァンの外観はシンプルですが、まぐさ石(リンテル)や柱の部分には細やかで美しい装飾が施されています。これの部分には「れんが」ではなく、砂岩が用いられました。
下の写真のまぐさ石(リンテル)には、ガルーダに乗ったヴィシュヌ神が描かれています。
欠けてしまっている箇所もありますが、現存している部分は彫りが深く、見事な造りをしています。完成当時の面影が感じられますね。
プラサット・クラヴァンのまとめ
美しいレリーフが特徴的な「プラサット・クラヴァン」についてご紹介しました!
遺跡としてはとてもコンパクトな造りですが、祠堂内部に刻まれた珍しいレリーフは一見の価値アリです。ぜひ小回りコースを見学する際に立ち寄ってみてください。
れんが系の遺跡ならではの温かみや美しさが感じられますね!
小回りコースを見学するなら、絶対に見逃せない遺跡の1つです!