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タ・ネイ [Ta Nei] 森の中に静かに佇む神秘的な遺跡の姿を堪能

タ・ネイ寺院12世紀末頃にジャヤヴァルマン7世によって創建された仏教寺院です。

規模は小さいながらも森の中に静かに佇む姿には趣があり、手つかずの美しさを醸し出しています。アクセスがやや不便なため、足を運ぶ人が少なく、まさに穴場とも言える隠れた名所です。

所々に仏教の逸話をモチーフにした美しい装飾が残っています。華美ではありませんが、慎ましやかに微笑むデヴァター像も魅力の1つです。

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タ・ネイってどんな遺跡

タ・ネイがどのような遺跡なのか、まずは基本情報を確認しましょう。

森の中に眠る小さな仏教寺院

タ・ネイ寺院はタ・ケウ寺院の北側の森の中にある小規模寺院です。

アンコール王朝最盛期、バイヨン寺院をはじめとする数々の仏教寺院を創建したジャヤヴァルマン7世によって、タ・ネイも建設されました。寺院にはいくつかの仏教モチーフが綺麗に残っています。

Ta Nei Temple

一説によると、プリア・カンの周辺寺院(Satellite Temple)として位置付けられていたのではないかと言われています。

Ta Nei Temple

位置的にはアンコール・トムからそれほど離れていませんが、タ・ネイに続く道が未舗装であることから訪問する人の数が少なく、遺跡周辺はとても静かです。

CN編集部

まさに「森の奥に眠る」寺院です。本格的な修復が行われていないため、まるで発見当時にタイムスリップしたような不思議な感覚を覚えます

タ・ネイ基本情報
  • 年代:12世紀後半〜13世紀初頭
  • 建設した王:ジャヤヴァルマン7世
  • 宗教:仏教
  • 建築様式:バイヨン形式
  • 寺院形態:平地型
  • 見学時間の目安:30分〜40分

途中で行われた設計変更

実は、タ・ネイ寺院の構造は他の遺跡と少し異なります。どうやら建築の最終段階で、設計変更が行われたようです。

中央祠堂を取り囲む第一回廊(最も内側)が東側に延長されたのではないかと考えられています。そのため、他の寺院よりも東西にやや縦長の構造になりました。

Ta Nei Temple

東側に回廊が延長された関係で、本来は第一回廊に含まれるはずだった祠堂が独立して建つ形になりました。他の回廊や祠堂と連結されていない祠堂はめずらしい形式です。

こうした設計変更の影響なのか、タ・ネイ寺院には興味深い建築構造や破風などが見受けられます

Ta Nei Temple

タ・ネイ遺跡への行き方

タ・ネイ寺院は、タ・ケウ寺院の北側に位置する遺跡で、アンコール・トムの中心にあるバイヨン寺院からは車またはトゥクトゥクで10〜15分ほどの位置にあります。

あまり一般的に知られていない遺跡ですが、意外と他の遺跡と距離が近いです。まさに「穴場スポット」と呼ぶにふさわしい隠れた名所ですね。

訪れる人が少ない理由の一つは、未舗装の道路です。コンクリートで舗装されていないため、赤土の道を進む必要があります。雨季になると道がぬかるみ、特に進みにくくなります。

実際に訪問した際は、タ・ケウ寺院の近くの小道をトゥクトゥクで通りました。道がわかりにくいので現地のドライバーさんやガイドさんに道を確認しながら進むのがオススメです。

Ta Nei Temple

タ・ケウ側から向かうと、タ・ネイ寺院の西側に到着します。ここから東側(正面)に向かって進み、折り返して戻ってきましょう。

東西180mほどの小規模寺院であるため、鑑賞の時間はそれほど多くかかりません。

Ta Nei Temple

タ・ネイ寺院の修復調査には日本のチームが関わっています

しかしながら、ほかの遺跡のように大きな修復工事はまだ行われていないため、崩れている箇所もいくつかあります。

CN編集部

「手付かずの美しさ」がタ・ネイ寺院の魅力ではありますが、未補修であることを念頭に置き、安全に注意しながら観光しましょう

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タ・ネイ遺跡を観光する場合には「小回りコース」の遺跡と一緒に周るのがオススメです

小回りコースの主な遺跡

タ・ネイの見どころ・特徴

森と一体化した遺跡の姿

タ・ネイは一部の旅行者や遺跡好きの間でひそかに大人気!

有名な寺院ではありませんが、森と一体化するように静かに眠る姿が、筆舌しがたい魅力を醸し出しています。大掛かりな修復がされておらず、崩れかけた状態で残っている点も人々の心を惹きつける理由の一つになっているのかもしれませんね。

Ta Nei Temple

発見当時に近い姿で残っている遺跡としては、ベンメリアも有名かつ人気ですが、シェムリアップの街から離れた位置にあり(車で片道1時間〜1時間ほど)、なかなか気軽に訪問できる場所ではありません。

その点、タ・ネイ寺院はアンコール・トムからさほど離れていないため、ベンメリア寺院と比べると観光しやすいスポットと言えますね。

Ta Nei Temple

現在は崩れている部分が多々見受けられますが、全体として洗練された印象を感じさせる寺院で、完成当時はさぞ美しかったことが想像できます。

アンコール王朝の最盛期とも言える12世紀後半に建立されたこともあり、クメール美術の一つの完成系を体現しています。

Ta Nei Temple

余計なものをすべて削ぎ落としたごとく、楚々とした佇まいのデヴァター像連子窓を模した偽窓。また、回廊に残された屋根の曲線など、ぜひ他の遺跡と比較しながら鑑賞を楽しんでみてください。

Ta Nei Temple

特徴的な破風のデザイン

タ・ネイ寺院には、仏教の逸話などをモチーフにした破風(Pediment)の装飾がいくつか残っています。

ジャヤヴァルマン7世によって創建された仏教寺院は数多くありますが、その後の廃仏毀釈はいぶつきしゃく運動」の影響により、多くの仏像や仏教モチーフは破壊・改変されてしまいました。

たとえば、タ・プローム寺院には、壁面から削り取られてしまった仏像の痕跡が多く残っています。中には、仏像がリンガ(ヒンドゥー教のモチーフ)に描き変えられてしまったケースもあります。

そうした中で、「廃仏毀釈」を免れたタ・ネイの仏教モチーフの装飾は貴重な存在です。小規模寺院であったが故に、見落とされたのかもしれませんね。

Ta Nei Temple

ボートの中央に立つ仏陀らしき姿。その上で傘を掲げているのは神々や王族だと推測されます。ボートの下には水中を泳ぐ魚らしき姿も。

Ta Nei Temple

ラテライトの壁の上に残された破風部分。中央の人物は顔が欠けてしまっていますが、おそらく仏陀です。両脇にいる二人の男が仏陀を攻撃する場面を描いています。未だ謎の多い場面ですが、この二人の男たちは、菩提樹の下で瞑想する仏陀が悟りを開くのを妨害するために、悪魔マーラが差し向けた手下たちではないかと推測されます。

Ta Nei Temple

上の写真の破風は、一説によるとシッダールタ王子(=後の仏陀)が29歳のときに王族の身分を捨てて出家をする場面(出城入山しゅつじょうにゅうせん)ではないかと言われています。しかしながら、破風の下段に描かれた阿修羅たちと矛盾するため、シッダールタ王子が婿選の儀式に出場した際の場面だと推測する説もあります。

Ta Nei Temple

上記の破風の中央にも元々は仏陀の姿が描かれていたのではないかと推測されますが、その部分だけ意図的に削り取られてしまっています。

Ta Nei Temple

祠堂の内部には、ヨニや祠堂の一部であったリンテル(まぐさ石)が置かれていました。リンテルは損傷が激しいですが、中央に描かれたカーラの姿を確認することができます。

Ta Nei Temple

ラテライトの壁(の一部)の上に、絶妙なバランスで残っている破風がありました。この特徴的な三角形は、タ・ネイの約250年前に建てられたバンテアイ・スレイコー・ケーに通じるものがあります。

慎ましい笑みを浮かべるデヴァター像

タ・ネイの壁面には、いくつかの美しいデヴァター像が残っています。

アンコール・ワット様式のデヴァター像と比較すると、装飾が控えめで慎ましやかな姿をしています。こうした姿は当時広まっていた仏教の美徳や精神性を反映したものなのかもしれません。

訪れる人に安らぎを与えるような慈悲深い表情をしています。

Ta Nei Temple
CN編集部

上の写真の、髪の毛を絞る仕草のデヴァター像は「髪の長い女の子」の伝説をモチーフにしているかもしれませんね。タ・プローム寺院に似た構図のものがあるので、気になる方はぜひそちらも併せてお読みください!

Ta Nei Temple
Ta Nei Temple
Ta Nei Temple

タ・ネイ遺跡|まとめ

今回は、森の中に隠れた名所スポットである「タ・ネイ」をご紹介しました!

日本語のガイドブックには掲載されていないこともあり、マニアックな遺跡ではありますが、一見の価値があるひじょうに美しい仏教寺院です。

貴重な仏教モチーフの破風を見ることができるので、ぜひ観光スケジュールに余裕のある方は足を運んでみてください。

タ・ネイ遺跡のポイント
  • 森の中に隠れた神秘的な姿
  • 特徴的な破風のデザイン
  • 慎ましい笑みを浮かべるデヴァター像
Ta Nei Temple