タ・プローム遺跡は、12世紀後半にジャヤヴァルマン7世によって創建された仏教寺院です。
巨大樹が遺跡に絡みつくように根を張っている姿が何よりも印象的で、数あるカンボジア遺跡の中でも特に人気のあるスポットになっています!
かつてハリウッド映画『トゥームレイダー』のロケ地として撮影が行われたことをきっかけに、世界中から多くの注目を集めるようになりました。
Klook.comタ・プロームってどんな遺跡?
ジャヤヴァルマン7世の母の菩提寺
タ・プローム寺院は、ジャヤヴァルマン7世が自身の母を弔うために建てた仏教僧院だと言われています。
ジャヤヴァルマン7世は、アンコール王朝21代目の王であり、もっとも偉大な王として今も語り継がれています。大乗仏教に帰依し、統治期間に数々の仏教寺院を創建しました。
クメール語で「タ・プローム」とは「梵天の古老」を意味します。かつては「ラージャヴィハーラ」(=王の僧院)という名前で呼ばれていたそうです。
ちなみに、タ・プロームが王の母に捧げられた寺院であるのに対し、プリア・カンは王の父の菩提寺であると言われています。神々への信仰と同様に、祖先崇拝もカンボジアでは古くから根付いていました。
現在、タ・プローム遺跡は損傷が激しく崩れている部分も多々ありますが、所々に当時の栄華を感じさせる面影が残っています。
壮大で複雑な構造、壁面に刻まれた華やかな装飾などから、当時ジャヤヴァルマン7世の治める国がいかに繁栄していたかが伝わってくるようです。
「ジャヤヴァルマン7世」ってどんな王様?
ヒンドゥー教寺院として改宗
現在のタ・プローム寺院の仏像の中には、人為的に削り取られたものが多くあります。建立時は仏教寺院でしたが、後にヒンドゥー教寺院に改宗されました。
かつて仏像が彫られていた壁面は削られ、その上から新たにリンガ(シヴァ神の象徴)が彫り込まれている部分もあります。ジャヤヴァルマン7世の没後に起きた「廃仏毀釈」運動の影響です。
経年劣化や盗掘などによる欠損もありますが、このように一部の過激派の手によって仏教にまつわる多くのレリーフや装飾が姿を消していったと考えられています。
Klook.comハリウッド映画『トゥームレイダー』のロケ地
タ・プローム寺院が一躍有名になったきっかけは、ハリウッド映画『トゥームレイダー』のロケ地として使われたことです。主人公はハリウッドスターの「アンジェリーナ・ジョリー」です。
トレジャーハンターである主人公ララは、父の遺言を頼りに秘宝を求めてカンボジアに向かいます。その際にララが迷い込んだのが、このタ・プローム遺跡でした。ジャングルに閉ざされた遺跡には神秘的な雰囲気が漂っていて、物語が動き出すのを予感させます!
このシーンが1つのきっかけとなり、タ・プローム寺院に世界中から多くの人が訪れるようになりました。
カンボジア旅行前に映画で学ぶ!
ちなみに、アンジェリーナ・ジョリーが撮影でカンボジアに滞在していたときに、好んで通っていたというお店が今も残っています。
パブストリートの一角にある「Red Piano」というお店で、彼女が気に入っていたと言われるカクテル「トゥームレイダー」が特に人気です! 興味のある方は、ぜひこちらのお店にも足を運んでみてくださいね!
タ・プローム遺跡へのアクセス
シェムリアップの中心部から車やトゥクトゥクで向かった場合、25〜30分程度かかります。オールドマーケットからだと約13kmの距離です。
タ・プローム寺院は、アンコール・ワットから見ると北東に位置し、車やトゥクトゥクを利用して15分前後で移動できます。距離にしておよそ8kmです。比較的近い位置にあるので、セットで観光しやすいと思います。
人気&定番の観光コース!
タ・プロームは、カンボジアの数ある遺跡の中でも特に観光客からの人気が高く、アンコール・ワットやバイヨン寺院と組み合わせた観光ツアーもたくさんあります。
シェムリアップ周辺にはたくさん遺跡があるので「どこに行ったら良いのか分からない」と迷ってしまうこともありますが、まずオススメなのがこの3箇所!
初めてのカンボジア旅行の場合には、この人気TOP3の遺跡をベースにして、他の遺跡観光を組み合わせると良いと思います!
上記3箇所を巡る観光ツアーは選択肢も豊富です。グループツアーやプライベートツアーなど、希望や予算に応じて選んでみましょう。
Klook.com自分でトゥクトゥクをチャーターしたり、自転車を借りたりして観光する方法もあります。そういう場合は、簡単にでも遺跡について予習しておくのがオススメです!
小回りコースをセットで巡る
タ・プローム遺跡は、「小回りコース」と呼ばれるルートの中に含まれる遺跡の一つです。
もちろんタ・プローム単体で訪れることも可能ですが、効率よく他の遺跡も観光したい方はぜひ「小回りコース」を利用してみてください!
オススメの遺跡はこちら!
タ・プロームの見どころ!
ここからはタ・プローム遺跡観光の見どころについてご紹介していきます!
全体の雰囲気だけでなく、壁面や破風などに刻まれた数々のレリーフにもぜひ着目しながら鑑賞してみてくださいね。
Klook.com遺跡に絡みつく巨大樹
まず観光客に人気があるのが、遺跡に絡みつく大樹の姿です。
自然の力を感じさせるために、タ・プローム遺跡ではあえて侵食する木々をそのままの状態で残しています。巨石を締め付けるその姿は、まるで大蛇のようです。
遺跡に絡みつく巨大樹は「スポアン(榕樹/ガジュマル)」と呼ばれる木です。タ・プローム遺跡の大木は、樹齢300〜400年と言われています。まさに圧巻の迫力ですね!
人気のスポットは、寺院内にいくつか散在していて、特に有名なのは東門の内側と中央祠堂を取り囲む回廊の西側にあります。
コロナ禍の前は観光客が多く訪れていて、人気撮影スポットでは順番待ちが必要なこともありましたが、2023年現在ではまだ比較的お客さんの数が少ないので、ゆったりと自分のペースで観光することができます!
どことなく退廃的な雰囲気が漂うタ・プローム遺跡。
諸行無常の時の流れと自然の力を感じさせるこの場所は、日本人の心に何か響くものがあるのかもしれません。
東西1000m、南北700mの広大な敷地
タ・プロームは、ラテライトの周壁で囲まれた広大な敷地を持つ寺院です。碑文によると、かつて寺院周辺には3140の村が存在したと言われています。
僧院には5000人以上の僧侶たちだけでなく、多くの踊り子も住んでいたそうです。当時の人々の信仰を集めていたことが窺えますね。
バイヨン寺院と同様に、一度寺院が完成した後も、増築が続けられた様子が残っています。
そのため、寺院の内部構造は複雑化し、まるで迷路のようになりました。
さらに現在は崩壊している箇所もあるので、余計に内部の構造は複雑になっています。脆くなっている箇所もあるので、崩れているエリアには登らないようにしてください。
タ・プローム遺跡の正面は東側ですが、西側から訪問することも可能です。
美しきデヴァター像
タ・プローム寺院の魅力の一つは、優美で柔和な表情を浮かべるデヴァター像です。
遺跡内の壁面の至るところに残っていますが、特に中央祠堂付近に残るデヴァター像は保存状態が良く、細部までその姿を確認することができます。
アンコール・ワットのデヴァターと比較するとその装飾は控えめですが、質素な美しさの中に芯のようなものを感じさせます。
長きにわたるアンコール王朝の歴史の中で成熟した高い芸術性が滲み出るようです。
「髪の長い女の子」の伝説
タ・プロームの東門の北側には、「髪の長い女の子」の伝説をモチーフにした浮き彫りが残っています。
壁面の上部、蓮の花の上で髪を絞っている女の子の姿が確認できます。
これは仏教のとある説話の場面を描いたものです。
ロムサイソーと呼ばれる女の子が、瞑想しているお釈迦さまを阿修羅から守った、という伝説が残っています。
残念ながら中央のお釈迦さまの部分は削り取られてしまいましたが、全体像は今でも確認することができるので、ぜひ探してみてくださいね。
かつてお釈迦さまが瞑想をしているとき、阿修羅がそれを妨げようとやってきました。そこで、ロムサイソーという名の女の子は、池の水を髪の毛で吸い上げ、お釈迦さまが瞑想をしている周囲に水を移し、阿修羅が瞑想場所に入ってこられないようにしました。
*ロムサイソーにまつわる伝承には他のパターンも残っています
見事な破風や壁面の浮き彫り
タ・プロームの壁面や破風には、デヴァター像以外にも見事な浮き彫りが残っています。
掘り込みが深く、完成当時はさぞ美しかったにちがいありません。
かつて仏像が刻まれていた箇所は、廃仏毀釈の関係で削り取られてしまいましたが、それ以外の箇所は当時のまま残っています。
上の写真は「般若波羅蜜多菩薩」を描いた破風(ペディメント)です。菩薩の周囲にはアプサラたちが舞っています。
般若波羅蜜多(Prajnaparamita)とはサンスクリットで「完全なる智慧」を意味します。女性名詞である「智慧」によって仏が生まれることから、「般若波羅蜜多は諸仏の母」とされているのです。
中には、仏像の代わりにリンガ(シヴァ神の象徴)が刻まれている部分もありました。
ジャヤヴァルマン7世によって建立された仏教寺院の多くには、このように構成になって改変された箇所が多く残っています。
破風(入り口上部の三角形の部分)だけでなく、ぜひ偽扉や付柱の装飾にも注目してみてください。
空白を恐れるかのように、細部まで彫り込まれた装飾が当時の人々の信仰心の篤さを物語っているようです。
タ・プローム遺跡の謎の一つと言われているのが、こちらのレリーフ。まるで恐竜のような姿をした生物が描かれています。実際、何の生物を描いたものなのか判明していません。
中央祠堂には財宝が埋め込まれていた?
タ・プローム寺院の中央祠堂の内部には、プリア・カンと同様に無数の穴が開けられています。諸説ありますが、どうやらこの穴に財宝(宝石など)が埋め込まれていたようです。
時間帯によって、朝日や夕日が中央祠堂に差し込み、宝石に光が反射して目が眩むほど輝いていたと言われています。残念ながら、それらはすべて盗難などにより失われてしまいました。
また、中央祠堂にはリンガの台座であるヨニだけが残っています。かつてはここにリンガが祀られていたはずです。
たくさんの写真映えスポット!
タ・プローム寺院は映画のロケ地として使用されたほど、神秘的な魅力が詰まった場所です。写真撮影のスポットとして、観光客だけでなく地元の若い人たちの人気を集めています。
ここではタ・プロームで実際に撮影した写真をご紹介! ぜひ記念撮影の参考にしてみてくださいね
タ・プローム遺跡のポイントまとめ
カンボジアの遺跡の中でも特に人気が高い「タ・プローム」遺跡についてご紹介してきました!
遺跡に絡みつくスポアン(榕樹)の姿が特に印象的で、別世界に迷い込んだかのような不思議な魅力が漂っています。
遺跡の規模は大きめですが、平地型の寺院なので起伏が多くなく、お子さんと一緒でも観光しやすいスポットです。
ぜひ当時の寺院の姿に思いを馳せながら、遺跡と自然が織りなす見事な芸術を楽しんでください!
アンコール・ワットやバイヨンなどの有名遺跡と並んで、特に人気のある遺跡です。シェムリアップを訪れる方は、超必見!