プレ・ループは、961年に創建されたアンコール王朝最後のれんが建築寺院です。アンコールの地への再遷都を果たしたラージェンドラヴァルマン2世によって造営されました。
ピラミッド型の寺院であり、三層の基段が重ねられていて、最上層に中央の祠堂がそびえるという構造をしています。シェムリアップの中でも人気のある夕日鑑賞スポットであり、美しい夕日とカンボジアの平原を楽しむことができます。
プレ・ループってどんな遺跡？
アンコール王朝最後のれんが建築
プレ・ループは、961年にラージェンドラヴァルマン2世［9代目の王］が建築したピラミッド型の寺院です。
ラージェンドラヴァルマン2世は、当時コー・ケーに置かれていた都を再びアンコールの地へ遷した王でもあります。王は、ヤショダラプラ都城（アンコールの地）を整備し、復活のための工事をいくつも行いました。優秀な専門分野の高官が輩出され、比較的平和な時代であったと言われています。
プレ・ループは、そうした時代に建築されたれんが造りの寺院です。以後は砂岩をメインで用いた建築が主流になったため、プレ・ループは王朝最後のれんが建築であると言われています。
火葬場として使われていた？
プレ・ループでは、死者を弔う火葬の儀式が行われていたのではないか、と考えられています。
「プレ」は「変化」、「ループ」は「体・姿」を意味する言葉で、死者の体が浄化することを示していたのかもしれません。
東塔門の入り口を抜けると、目の前に大きな石槽が置かれていることに気づきます。これは死者を荼毘に付すのに使われていたようです。また、遺跡の北東部には、火葬後の灰を流したとされる場所も残っています。
プレ・ループ遺跡へのアクセス
プレ・ループは大回りコースに含まれる遺跡です。
夕日鑑賞のスポットにもなっているので、時間帯やルートなどを確認しておくとよいでしょう。
大回りコースで訪問するのがオススメ
シェムリアップには、「小回りコース」「大回りコース」と呼ばれる遺跡見学コースがあります。プレ・ループは「大回りコース」に含まれる遺跡です。
せっかくなら、プレ・ループ以外の遺跡もセットで「大回りコース」として見学するのがオススメ！ 特にプレ・ループと近い時代に、同じ王によって建立された「東メボン」と比較しながら見学するとおもしろいと思います。
ほかにも大回りコースには見応えのある穴場遺跡が多いので、ぜひ訪れてみてくださいね！
せっかく遺跡を観光するなら、ガイド付きツアーがおすすめです。レリーフの意味やアンコール王朝の歴史に関する解説を聞きながら鑑賞できるので、さらにカンボジアの遺跡を楽しむことができます。
安心＆便利な現地ツアーを上手に活用！
夕日鑑賞の隠れた人気スポット
シェムリアップで人気の夕日鑑賞スポットといえば「プノン・バケン」が最も有名ですが、実はプレ・ループからも美しい夕日を楽しむことができます！
プノン・バケン遺跡ほど混雑しないので、ちょうど良い夕日鑑賞スポットといえますね。日本人の方はあまり見かけないです
雨季の期間は曇っていてよく見えないこともありますが、タイミングが良ければジャングルに沈んでいく夕日を眺めることができます。空が少しずつ赤く染まっていく様子をぜひ楽しんでくださいね！
階段の上り下りに注意
プレ・ループ遺跡はピラミッド型の寺院であるため、最頂部に向かうには階段を上る必要があります。
設置されている階段は東西南北の４ヶ所ですが、石の階段は傾斜が急であり、段差も大きいので、上り下りの際には注意が必要です。
遺跡の北側には木製の階段が設置されており、ここから上り下りすることができます。手すりがついているので、木製階段を利用した方が安心ですね。
遺跡には柵などが付いていないので、注意が必要です。危ないので決して走らないようにしましょう。
プレ・ループ遺跡の見どころ！
もちろん見どころもたくさんあります。
- 珍しく貴重な女神像！
- 美しいまぐさ石と偽扉の装飾
- 最頂部からの美しいジャングルの景色
- 死者を荼毘に付した石槽
- 基壇に配置された経蔵や小祠堂
珍しく貴重な女神像！
プレ・ループの特徴の一つが、他の遺跡ではほぼ見かけない珍しい女神像です。最上段の南西の副祠堂は超必見！
まずは4つの顔を持つ女神、サラスヴァティの姿を探してみましょう。
サラスヴァティは、ヒンドゥー教三大神の一柱であるブラフマーの娘であり、神妃でもあります。知識、知恵、芸術、真実、学問、文化をつかさどる女神です。日本では七福神の「弁財天」として親しまれています
プレ・ループでは、夫であるブラフマー神に倣って、4つの顔と4本の腕を持つ姿で描かれています。アンコール遺跡群の中でも珍しい意匠です。
そして、プレ・ループ遺跡で見逃せないのが、イノシシの頭をした女神像です。こちらはヴィシュヌ神の妻であるラクシュミーの姿であると言われています。
ヴィシュヌ神は10個のアヴァター（化身）を持っていて、猪の頭をしたヴァラーハもその一つです。
美しいまぐさ石と偽扉の装飾
プレ・ループは基本的にれんが造りの寺院ですが、まぐさ石や偽扉など、細かい装飾が施されている部分には砂岩が用いられています。
アンコール遺跡群の中でも比較的古い年代の遺跡（10世紀中頃）であるにもかかわらず、深い彫りの彫刻が今でも残っています。
プレ・ループ遺跡では、三つの頭の象の上に乗るインドラ神の姿も描かれているので、ぜひ探してみてください。象の上に乗った姿は、ほかの遺跡でもよく描かれています。
そして、もう一つ注目したいのは美しい偽扉の装飾です。東側を向いた本物の扉以外は、このように偽の扉が設置されています。
なぜこのような「偽扉」が設置されたのか明らかにはなっていませんが、本来の入り口である東側に特別な意味を持たせるために、意図的に造られたのかもしれません。
ひじょうに手の込んだ細かい装飾が施されていて、デザインも美しいですね！
遠くから見ると、どこが本物の入り口なのかわからないほどです。
最頂部からの美しいジャングルの景色
プレ・ループ遺跡の醍醐味と言えば、最頂部から眺める広大な景色！
夕日の鑑賞スポットとしても人気がありますが、晴れた日も同じくらいオススメ！青い空に緑豊かなジャングルがとても映えます。
青空を背景に写した中央祠堂も美しいです。天に向かってそびえ立つ姿が神々しいですね。
周辺には高い建物がいっさい無いので、遠くまで見渡すことができます。
ぜひプレ・ループの頂上まで上ったら、ここからの眺めもゆっくり堪能してみてくださいね！
死者を荼毘に付した石槽
プレ・ループでは、火葬の儀式が行われていたのではないかと考えられています。
その証拠の一つが、東側に設置されている石槽です。この石槽は、死者を荼毘に付すのに使われていたようです。プレ・ループ遺跡を訪れたら、ぜひこの石槽を探してみてください。
また、プレ・ループの北東には、火葬後の灰を流したと言われる場所が残っています。
基壇に配置された経蔵や小祠堂
プレ・ループには地上部分にもいくつかの小祠堂が建てられています。
特に石槽の両脇にある経蔵は独特の形状をしていて興味深いです。れんがを積み上げて、縦に細長い形状の窓を設置しています。
また、東側に5つ並んだ祠堂にも着目してみましょう。南東側には3つの祠堂が並んでいるのに対して、北東側には2つしか祠堂が残っていない点がとても不思議です。
遺跡は基本的に左右対称に造られることが多いですが、あえて非対称に造ったのにも意図が隠されているのかもしれませんね。
プレ・ループ遺跡ポイントまとめ
大回りコースの見どころの一つである「プレ・ループ遺跡」についてご紹介してきました！
アンコール・ワットやバイヨンなどと比べるとあまり知名度はありませんが、珍しいレリーフが確認できる貴重なスポットです。アンコール王朝最後のれんが建築という点でもひじょうに価値があります。
特に晴れた日に最頂部から見渡す景色が素晴らしいです！ それだけでも訪れる価値があると思います。
「大回りコース」の最後に訪問して、ここで夕日鑑賞を楽しむプランもおすすめです！